ニュース - 2017.11.22

東京高裁、クラックプログラム使用情報を販売した男性に対して控訴審で商標法違反による有罪の実刑判決

BSA | The Software Alliance(本部:米国ワシントンDC、以下BSA)は本日、長野県内の40代男性がBSA加盟企業であるアドビ システムズ インコーポレイテッド(以下、アドビ システムズ)等の商標権を侵害したとして告訴していた事件につき、東京高等裁判所が2017年8月24日付けで男性に対し有罪の実刑判決を下した判断を維持して控訴を棄却する判決を出し確定したと発表しました。

長野県内の男性は、2015年2月16日頃、インターネットのオークションサイトである「ヤフオク!」上で、アドビ システムズが著作権を有する「Adobe Photoshop CC」製品等の認証を不正に回避するクラックプログラムの使用情報を掲載したクラックマニュアルを販売するために、同社の登録商標に似せた商標を無許可で載せて広告を掲出していました。

栃木県警察本部生活環境課と宇都宮東警察署は、これが商標法違反に当たるとして2015年11月23日に男性を逮捕しました。宇都宮地方検察庁は同年12月14日付けに男性を起訴し、宇都宮地方裁判所が2016年6月24日に懲役1年、罰金100万円(併科)の有罪の実刑判決を下しました。男性はこの判断を不服として上訴していましたが、控訴審の東京高等裁判所、上告審の最高裁判所はいずれも男性の主張を退けました。

男性の主張は多岐に及びますが、概ね以下の通りでした。

  1. 本件広告が指定商品ではないソフトウェアのマニュアルに関する広告でありソフトウェアに関する広告ではない
  2. 本件各標章を使用したことについては商標的使用に該当しない(説明的に商標を使用したもの)
  3. 登録商標に類似しない
  4. 出所表示機能、品質保証機能を害しないことによる実質的違法性阻却事由が存在する
  5. 可罰的違法性がない
  6. 故意がない
  7. 違法性の意識の可能性を欠いたことに相当な理由がある

控訴審では、男性は、一部の登録商標については、男性が商品について使用した各標章は役務商標である各登録商標とは類似しない、登録商標に無効原因が存在する(「Photoshop」の商標の有効性)として無罪主張をしていました。また、訴因変更がなされたことに関して、変更後の訴因は違法である旨の主張や、原判決の量刑が不当である旨の主張もしていました。

東京高裁は、2017年3月10日の判決で、男性の主張をすべて退けて長野地裁の判断を維持しました。本件各標章の利用が商品に関する広告情報に標章を付けて電磁的方法により提供することで、本件各商標をそれぞれ使用して商標権を侵害する行為とみなされる行為に当たり、男性の販売広告が商標法違反に当たるとして、東京高裁は男性に対して、懲役1年、罰金100万円(併科)の有罪の実刑判決を下しました。

東京高裁は判決の中で、ソフトウェアに関する広告ではないとの主張に対して、「本件マニュアルは、ソフトウェアの使用方法に関する説明ではなく、落札者が使用制限のないソフトウェアを入手することを可能にする手段であり、被告人は落札者によるマニュアルに従った作業を介して、いわば非正規品のソフトウェアを販売していたに等しい状況にあったといえる。よって、取引の実情を見てみても、各広告の対象となる商品が、マニュアルだけではなく各ソフトウェアそのものでもあることを否定するような事情は認められない」と判断しました。

また、男性から、「実質的違法性がない」との主張に対しては、「真正な体験版や認証に用いられるコードが取得できないソフトウェアを提供しても、それだけでは落札者において使用制限のないソフトウェアとして使用できるわけではないので、正規のライセンスを受けられる商品の転売と同視できないことは明らかである」、「被告人が体験版などの正規のソフトウェアの入手方法とともに、使用制限を外すためのクラックツールの入手及び使用の方法についても情報を提供し、落札者が使用制限のないソフトウェアを入手することを可能にする手段を提供していたと認められることに照らすと、使用制限を外すための作業自体は落札者が行うものの、落札者の作業を介して、被告人自身が物理的には使用制限のない非正規品のソフトウェアを販売していたに等しい状況にあったといえ」ること、以上からすれば、本件の商標使用は、「真正商品の転売の際の商標の使用と同様であるとは到底認められないから、出所表示機能及び品質保証機能を害しないことを理由に実質的違法性が阻却されるとはいえない」と判断しました。

なお男性は、2014年10月15日にも、BSA加盟企業であるマイクロソフト コーポレーションの商標を不正に使用し、インターネット上でプロダクトキーやクラックプログラムを販売する旨の広告をしたことが商標権侵害に当たるとして、宇都宮地方裁判所栃木支部より商標法違反等で有罪判決(懲役1年(執行猶予3年)及び罰金100万円(併科))を受けましたが(BSA:2014年10月16日プレスリリース参照)、今回の判決で男性の執行猶予が取り消され、男性は前回の刑と併せて服役することとなります。

今回の判決を受けBSA日本担当共同事務局長の松尾早苗は、「クラックプログラムの提供が不正競争防止法違反に当たり、BSA参加企業の商標を使用してソフトウェアやそのプロダクトキーを販売することが商標法違反に当たるとする判決が各地の裁判所で下されています。今回の判決は、クラックマニュアルなどの情報の販売に際しての広告に商標法違反を認めたもので、同種事案の抑止や対処にとって非常に意味のある事案です」とコメントしています。
 
 

【組織内の不正コピーについて】
企業や学校、病院など複数のコンピュータでソフトウェアを使う組織内における不正コピーのことを指しています。現在日本でもっとも多く見られるソフトウェアの不正コピー形態でもあります。例えば、1台のコンピュータでのみ使用することが許諾されたソフトウェアのパッケージを入手して複数のコンピュータにインストールするような場合がこれに該当します。

【違法告発.comについて】
違法告発.com」は、組織内の不正コピーの実態と情報提供の安全性等を広く訴求することを目的にしたマイクロサイトです。2014年11月にリニューアルされ、気弱な主人公が職場に潜む不正コピーに立ち向かう姿を描いた新連載マンガ「知財×ブラック」を公開しています。このほか、過去の通報案件をヒントに組織内における不正コピーの手口を読み切り漫画で紹介する「不正コピーのある風景」、BSA日本担当顧問が情報提供の安全性等をお答えする「BSAへの情報提供が安心な4つの理由」、不正コピーの通報経験者へのアンケートをもとに、通報から不正コピー使用状態の改善までの貴重な体験談まとめた「私が決断した理由」の4つのコンテンツを中心に構成されています。

【BSA | The Software Allianceについて】
BSA | The Software Alliance (BSA | ザ・ソフトウェア・アライアンス)は、政府やグローバル市場において、世界のソフトウェア産業を代表する主唱者です。BSAの会員は世界で最もイノベーティブな企業で構成されており、経済を活性化させ、現代生活を向上させるソフトウェア・ソリューションを創造しています。ワシントンDCに本部を置き、60カ国以上で活動するBSAは、正規ソフトウェアの使用を促進するコンプライアンス・プログラムを先導し、技術革新の推進とデジタル経済の成長を促す公共政策を提唱しています。

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組織内不正コピーに対するBSAの取り組み
BSAでは組織内不正コピーの問題解決を目的に、一般から組織内不正コピーに関する情報を受付ける「情報提供フォーム*1」を設置しており、現在、有力情報に最高100万円:*2を提供する「報奨金プログラム」を実施しています。

*1 情報提供フォームのリンク先URL:https://reporting.bsa.org/r/report/add.aspx?src=jp&ln=ja-JP&_ga
*2 報奨金の提供には一定の条件があります。詳しくは、同サイト内の「報奨金の適用条件」をご確認ください。

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