■2012/8/9
日本政府のIT資産「見える化なくして最適化なし」
〜BSA、日本政府のITマネジメントに提言〜

ビジネス ソフトウェア アライアンス(本部:米国ワシントンDC、会長:ロバート W. ハリマン II、以下BSA)はこのたび、株式会社NTTデータ経営研究所(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:豊田 充)と共同で、政府のITマネジメントについての提言をまとめました。提言は、日本政府のITマネジメントのあり方をIT資産管理の観点から考察したもので、今年3月に有識者会議が設置されるなど政府のITマネジメントに関する議論が積極化する中、「保有するIT資産の全体を的確に把握すること」こそが、効果的なマネジメントにつながると指摘しています。BSAは、同提言につき総務省はじめ中央省庁のITマネジメントに携わる政策担当者、およびこの分野に知見を持つ有識者等との意見交換等を行い、政府におけるIT資産管理の徹底を呼びかけてまいります。

提言1 政府が保有するIT資産の見える化

  • 政府情報システム管理データベースの構築とその運用開始後の定期的かつ継続した棚卸により、段階的かつ継続的な政府保有IT資産の客観的な根拠に裏付けされた、透明性の高い見える化を進めること。
  • IT資産の見える化に当たっては、資産状況の把握に加えて、政府職員によるIT資産の利用環境の変化、多様化の実態把握もあわせて実施すること。
  • 継続的なデータベースの運用にあたり、データベースの活用施策、すなわち、データ分析手法の導入、IT資産管理業務の集約化、自動化による業務効率化やIT の品質向上などの実施施策を合わせて進めること。
  • 政府の情報セキュリティ上のリスクはIT資産の不十分な管理、実態把握に起因するところが多いため、IT資産の見える化に当たっては、ネットワークに常時接続していないIT資産も含めて、網羅的にIT資産のリスク管理も取り組み対象とすること。
  • 政府職員向けのIT資産管理に関する支援機能、たとえば指標化、一覧性確保、課題やステータス把握、各種意思決定等の支援機能を、必要に応じて支援ツールや国際標準も活用して整備すること。

提言2 政府CIOによるマネジメントの強化

  • 政府が設置を明言している政府CIOには法律上の根拠に基づく十分な権限を付与されるべきであるが、なかでもIT関連予算の査定、事後評価等に関する十分な権限を持つこと。
  • 政府CIOには、政府CIOのスタッフ部門及び府省CIOを通じて府省横断での最適なIT資産管理への強いリーダーシップを発揮することを期待する。
  • 政府CIOがITマネジメント上の課題解決に取り組むに当たっては、各府省の協力とともに、政府CIOを支える強力なスタッフ機能が不可欠である。短期間の各府省及び民間企業からの出向にとどめず、当該スタッフ部門にも権限を持たせることで政府CIOへの帰属意識を高めること、また、民間企業側でも「エース級」を送り込むとともに、経験者を出向から復帰後要職につける等、民間側でのバックアップサポートも不可欠である。

提言の本文はこちらからご覧いただけます。
http://www.bsa.or.jp/file/policyrecommendation120809.pdf

効果的なITマネジメントを実現するにあたっては、まず何よりもIT資産の見える化が必要です。本提言における「見える化」とは、ソフトウェア資産管理の手法を用いて、行政機関より細かい単位、例えば課、室、あるいは場合によっては個人単位で、ITの利用状況あるいは所有権またはライセンスの保有状況について、関係者が横断的に理解、分析可能な形で情報、データが提供、整理されるとともに、こうした情報の分析により、ITマネジメントにおける課題把握や対応策の整理までが実現可能となるという広範な概念を意味します。

現在進められている、政府情報システムの棚卸と政府情報システム管理データベースの整備は、行政のIT資産の見える化の一環であり、歓迎すべき動きです。こうした整備事業によって、まず現在の状態を正確に把握することが、以後の改善と情報システムの刷新には必要不可欠と考えます。

ただし、データベースも構築しただけで機能するものではなく、戦略的なマネジメントのもとで、継続的に管理されていくことが必要です。その戦略的マネジメントを担当するのが政府CIOの役割であり、今後、強力な政府CIOのもとで定期的・継続的な管理と、管理の精度向上が実現していくことを期待しています。

今回の提言にあたっては、参考事例として、英国、米国の中央政府におけるITマネジメントの動向も調査しました。また、行政組織において提言内容を実現するための環境整備についても言及しました。BSAは、行政におけるIT環境が、新たなイノベーションを引き出す基盤としての役割を十分に発揮し、社会全体に資するものとなることを願い、引き続き情報発信を行ってまいります。

BSAについて

ビジネス ソフトウェア アライアンス (BSA) は、ソフトウェア市場の成長とイノベーションのための環境整備を目的に、世界80ヶ国で活動している世界最大のソフトウェア業界団体です。今日、ソフトウェアは、世界中の国の経済および社会的発展を推進する上で必要不可欠であり、各国政府およびパートナー企業は、ソフトウェアに関する重要な政策・法的問題についてBSAの専門的な意見に関心を寄せています。BSAメンバー企業は、地域経済、より良い雇用の創出、さらに世界中の人々の生産性向上、つながり、安全に役立つ次世代型ソリューション実現に向け、毎年数十億ドルの投資を行っています。BSAのメンバーには、アドビ システムズ、アジレント・テクノロジー、アンシス、アップル、Aquafold、ARM、オートデスク、ベントレー・システムズ、CNC/Mastercam、ダッソー・システムズ・ソリッドワークス・コーポレーション、メンター・グラフィックス、マイクロソフト、Minitab、オルボテック、ピツニーボウズ、Progress Software、Quest Software、ロゼッタストーン、シーメンスPLMソフトウェア、サイベース、シマンテック、テクラおよび The MathWorksが加盟し、活動を行っています。詳しくは、BSA日本のウェブサイトwww.bsa.or.jp、または、BSA米国本部のウェブサイトwww.bsa.org/usa(英語)をご覧ください。