リリース記事

■2011/9/27
BSA、日本がグローバルIT産業競争力のランキングにおいて下降と発表
〜EIU 調査によると米国などが影響力を維持する一方、開発途上国の躍進が顕著化〜

安全で信頼できるデジタル社会の実現を推進するビジネス ソフトウェア アライアンス(本部:米国ワシントンDC、会長兼CEO:ロバート・ハリマン、以下BSA)は本日、Economist Intelligence Unit(以下EIU) が発行した「2011 年度版IT産業競争力のベンチマーク」の調査結果を公開し、他国と比較して日本の競争力が下降しながらも、アジア太平洋地域においては4位となっていると発表しました。

今回で2007 年以来 4 度目の更新となる「IT産業競争力のベンチマーク」は、IT産業の革新に欠かせない基盤領域となる総合的なビジネス環境、ITインフラ、人的資本、研究開発、法的環境、IT産業発展に向けた公的支援を示す一連の指標に基づき、世界66 カ国を対象に評価調査が実施されました。「2011 年度版IT産業競争力のベンチマーク」(英語)は、BSAのWebサイト(www.bsa.org/globalindex)をご覧ください。

本調査には、相対順位表、各国の詳細な要約、産業事例、IT専門家によるコメントが記載されています。今回の調査結果において総合順位上位に入っているのは、米国、フィンランド、シンガポール、スウエーデン、英国となりました。その反面、日本はIT産業発展および人的資本における脆弱性により、前年度からランクを4位下げ、16位へと下降しました。日本は、ブロードバンドの普及率およびその他のITインフラにおいて十分な優位性を保持していますが、競争力を増している研究開発環境において、今後更なる尽力が必要であると言えます。日本の詳細な要約に関しては貼付の参考資料をご覧ください。

従来から IT産業において力を発揮している国は、「これまでの優位性が、さらなる優位性を生む」という効果により、上位を維持し続けています。つまり、長期的な投資を通じて技術革新のための強固な基盤を構築してきた結果、引き続きその成果を得ていると言えます。ただし、グローバル競争の場においては、新たな挑戦者の出現により混迷が深まってきています。特筆すべき点として、開発途上国が、先進国がこれまで基準としてきたものを満たし、さらなる追従を見せていることです。

BSA の会長兼 CEOであるロバート・ハリマンは、「今回のIT産業競争力指標から分かることは、技術革新基盤に投資することが、長期的に大きな利益をもたらすということが極めて明白になっています」と述べています。また、「IT産業において、どの国も独占状態では無いことが明らかであると同時に、誰もが成功を掴むための可能性を秘めていると言えます。その結果、IT産業のパワーは世界分散型へと移行しつつあります」とも言っています。

更にハリマンは、以下のように続けています。「日本は今年の総合順位において、2009年度の12位から順位を4つ落としています。今回の結果が示すとおり、日本は研究開発において6位を獲得しましたが、その他の領域においてはいずれもトップ10位以内に入ることができませんでした。今後、日本の政策立案者は、人的資本およびIT産業発展に向けた公的支援などの研究開発以外の分野において改善の機会が与えられたとも言えます。我々のこれまでのグローバルな経験という観点から考えると、その努力は報われます」。

2009 年度版と比較して、今年の指標で最も際立った動きを示しているのは、研究開発活動の急伸により総合順位を11ランク飛躍させたマレーシアです。加えて、堅実な研究開発の強みと力強い人的資本環境を活かして10ランクの飛躍を遂げたインドも顕著です。その他、シンガポール、メキシコ、オーストリア、ドイツ、ポーランドなど多くの国々も、今年はあらゆる IT 基盤領域で全体的に新たな競争力を発揮し、総合的な成果を強く示しています。

「グローバル経済の回復に伴い、政府は長期的な視点に立ってIT産業の発展を見極めるための、さらなる重要性を担います。政策立案者は、これらの問題を 1 年単位で捉えていてはいけません。短期的な問題と考えていては、取り残されてしまう可能性があり、今後7〜9年間を評価した上で、IT産業の競争力を著しく高めるための投資を行う必要があります」と、ハリマンは語っています。詳細な調査結果は、BSAのWebサイトwww.bsa.org/globalindex (英語)をご覧ください。

日本語による詳細な調査結果は、10月上旬に下記よりご覧いただける予定です。

【参考資料】

「2011年度 版 IT 産業競争力のベンチマーク」

日本

<総合ランキング>
国名 2011年度
ランキング
2011年度
スコア
2010年度
ランキング
2010年度
スコア
シンガポール 3 69.8 9 68.2
オーストラリア 8 67.5 7 68.7
台湾 13 64.4 15 63.4
日本 16 63.4 12 65.1
ニュージーランド 18 61.3 19 58.8
香港 19 60.8 21 57.5
韓国 19 60.8 16 62.7
マレーシア 31 44.1 42 35.6
インド 34 41.6 44 34.1
中国 38 39.8 39 36.7
タイ 50 30.5 49 31.8
フィリピン 52 27.9 51 28.5
ベトナム 53 27.1 56 25.0
インドネシア 57 24.8 59 22.8

<ハイライト>
  • 日本は今年のランキングで、ランクが4つ下がりました。主な原因は、IT 産業発展へ向けた公的支援と人的資本のカテゴリでスコアが落ちたことです。
  • 日本はIT 市場が成熟しており、IT 支出額の増大は引き続き低調になると予測されます。ただしブロードバンドなどの IT インフラについてはいまだ先進的な立場にあり、堅調を維持しています。モバイル分野における技術と市場の進展も、日本の開発・製造者にとって好材料になることでしょう。
  • 今後の日本にとっては、IT ・通信サービスの提供に関してグローバル レベルの競争力を維持することと、研究開発(R&D)環境におけるさらなる競争の激化に適合することが主な課題です。

日本は、「2011年度版 IT 産業競争力のベンチマーク」 において世界第 16 位となっています。2009 年の 12 位と比較して 4 ランクの下落です。これは、IT 産業発展へ向けた公的支援、人的資本という 2 領域でスコアが若干低下したことに起因します。日本はアジア地域では 4 位で、その1つ上は台湾(世界第 13 位)、すぐ後にニュージーランド(18 位)、韓国、香港(いずれも 19 位)がひかえています。

ビジネス環境:日本はこのカテゴリで世界第 23 位です。2009 年と比較して1 ランクの下落です。主な原因は日本以外の国の向上で、特にエストニアは一気に日本を追い抜いています。日本は、私的財産権の保護、新会社の設立に関する政府規制、競争の自由などの点で健闘しています。ただし海外投資政策は、グローバルな比較では現在もやや不振です。

IT インフラ:日本は 13 位を維持して、オーストリアと肩を並べています。ブロードバンドの普及、IT 投資、PC 所有台数はいずれも 2009 年を上回りました。日本のモバイル加入率は他の多くの先進国を下回っていますが、第四世代(4G)技術の採用とスマートフォンの供給量増大に伴う成長が見込まれます。アップルやサムスンなど現在はまだ著しいプレゼンスを示していない国外のスマートフォン メーカーも、要求度の高い日本市場で地歩を固めることが予想されます。ネットワーク機器については、2011 年 3 月の大地震と津波の発生後に日本が取り組んでいる基本インフラの再構築に伴って需要が増大することが予想されます。

人的資本:人的資本領域で、日本は 2009 年の第 12 位から 2 ランク下がり世界第 14 位につけています。これは日本が高等教育機関への進学率を維持する一方で、他の国々がこの領域で進展を示したことが背景にあります。日本の理工系大学・専門学校進学率とテクノロジー セクターの雇用率も比較的安定しており、IT 雇用の面でも日本は世界屈指のスコアを維持しています。日本のテクノロジー スキルのスコアは、「IT産業競争力のベンチマーク 」を構成する他のほとんどの国々と比較して高レベルを維持しています。

研究開発(R&D)環境:日本は、その研究開発(R&D)環境の充実度という点では2009 年と変わらず世界第 6 位を維持しています。R&D投資は公共部門と民間部門のいずれも増大しました。ただし民間部門のR&D支出は、企業が国外で低コストのR&Dを追求していることを受けて、高水準ながら他国よりも低い増加率を示しています。日本の IT 特許のスコアは 2009 年と比較して若干後退しました。これは、日本の特許申請全体に占める IT 関連の申請件数が減ったことが背景にあります。

法的環境:日本はこのカテゴリの主要な指標でそのスコアを維持してはいますが、主に他の国々の法的環境整備の動きに影響されて、 1 ランク低下の 20 位となりました。成熟した IT 市場と規制を実現している日本では、すでに知的財産の保護と権利執行に関する法律、効果的なデータ プライバシー、迷惑メール対策法を展開しています。

IT 産業発展へ向けた公的支援:日本はこのカテゴリで、2009 年の第 26 位から 3 ランク下落し世界第 29 位につけています。主な原因は、国内外からの投資資本調達の減少です。IT ハードウェア、ソフトウェア、サービスへの政府支出は、若干増大しています。日本の電子政府戦略は比較的高いランクを維持していますが、政府のテクノロジー中立性(あらゆる参加者とテクノロジーに開放された場の維持)という点では、「IT産業競争力のベンチマーク」を構成する他の先進国に遅れをとっています。

「IT 産業競争力のベンチマーク」について

「IT 産業競争力のベンチマーク」は、競争力の実現要因を評価し、IT 部門実績でのその相対的重要性を判定することで、66 か国の情報技術(IT)産業環境を測定します。今回で4 年目となった「IT産業競争力のベンチマーク」は、各国の IT 産業の競争力向上の原動力を測る調査の中核的な存在であり、ビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)が エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(Economist Intelligence Unit) に委託して作成しています。本調査の指標、スコア算定方法、定義、書面による分析、ケース スタディ、ビデオ インタビューなどの詳細については、www.bsa.org をご覧ください。

Economist Intelligence Unit について

Economist Intelligence Unit(EIU)は、経済およびビジネスの調査、予測、分析に基づいてデータを提供する世界有数の組織です。1946年以来、世界中の企業、政府機関、金融機関、学術機関向けに正確かつ公平な情報を提供し、ビジネスリーダーが確信をもって行動できるように支援してきました。詳しい情報は、http://www.eiu.com (英語)にアクセス、もしくはwww.twitter.com/theeiu(英語)でフォロー願います。

BSAについて

ビジネス ソフトウェア アライアンス (BSA) メンバー企業は、電子商取引に必要不可欠なソフトウェア、ハードウェア、その他のテクノロジーの開発を行っています。BSAが取り組む重要な問題には、著作権保護、サイバー・セキュリティー、貿易、電子商取引、インターネットに影響を与える公共政策などがあります。詳しくは、BSA日本事務局のウェブサイトwww.bsa.or.jp、または、BSA米国本部のウェブサイトwww.bsa.org(英語)をご覧ください。

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