リリース記事

■2007/10/01
BSA、EIU調査「IT産業競争力指標」日本の詳細データを発表
日本、特許を中心とした世界トップの研究開発環境を強みに2位
今後の課題は、ビジネス環境、ITインフラ、法的環境の整備

国際的なビジネスソフトウェアの業界団体である、ビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)は、本日、「競争のための手段−IT産業競争力のベンチマーク」調査における日本の詳細データを発表した。

同調査は、BSAが英エコノミスト誌グループの調査機関、Economist Intelligence Unit (EIU)に委託して64カ国を対象に実施したもので、「IT産業競争力指標」ランキングでは、米国の1位に次いで、日本は2位(総合スコア:72.2)にランクインした。日本が2位となった要因は、研究開発環境のスコアが84.3と突出して高かったことと、同調査において研究開発環境の比重が全体の25%と比較的大きいことが挙げられる。同カテゴリーにおいては、2位の韓国(56.6)を大きく引き離しており、大量の特許登録と研究開発に対する民間セクターの積極的投資(GDP3.5%に相当)がハイスコアに貢献した。

一方、日本にとって比較的弱い分野は、総合的なビジネス環境(世界24位)、ITインフラ(世界17位)、法的環境(世界18位)、IT産業に対する支援(世界18位)だった。中でも、最もスコアが低かったビジネス環境については、既存の市場参加者が保護されている点、政府が海外からの対内投資の効果を疑問視している点を指摘。IT産業は、国際的企業との技術提携の増加による恩恵を享受していることから、この分野の向上には、日本がもっとオープンかつリベラルな経済を反映したビジネス環境の整備を促すことだと分析している。

指標となるカテゴリーは、総合的なビジネス環境、ITインフラ、人的資本、法的環境、研究開発環境、IT産業発展支援の6つ。また、加重値としてIT労働生産性があり、この分野では日本は世界8位とトップテン入りを果たしている。「日本のIT産業にとってのベンチマークはどこなのか、この調査から読み取れることも多いと思う。日本の場合、研究開発の分野が驚異的なスコアを挙げたものの、今後さらに発展するためには課題も多い」と、今回、日本の詳細データを発表するにあたって来日した、BSA副会長兼アジア太平洋地域責任者のジェフリー・ハーディーは語っている。「今日ITは、世界的に社会経済の発展において先導要因となっている。日本のIT産業が弱点を克服しつつ、今後もアジア、世界のIT産業を牽引するよう期待している。」

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授・国際CIO学会会長で、世界の電子政府ランキングをアジアで初めて発表した小尾敏夫氏は、「IT産業競争力を比較した調査はこれまでも実施されてきているが、今回の調査では、研究開発、中でも特許に重きを置いている点に特徴がある。私が行った『電子政府ランキング2007』と比較すると、共通しているのは、ITインフラの整備と利用度の向上が課題として浮上している点だ」と、コメントした。

BSAでは、同調査結果を元に、各国で政策提言活動を展開している。日本においても、11月に開催される国際CIO学会で同テーマについて掘り下げて議論し、その見解を踏まえた上で政策提言していく考えだ。BSAでは今後も引き続き、政策提言・教育啓発・権利保護支援などの活動を通じて、安全で信頼できるデジタル社会の実現に貢献していく。

以上

◆調査資料:EIU「競争のための手段−IT産業競争力のベンチマーク」(日本語訳) http://www.bsa.or.jp/material.html

BSAについて

ビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)は、世界80カ所以上の国や地域でビジネスソフトウェア業界の継続的な成長と、安全で信頼できるデジタル社会の実現を目指して、政策提言・教育啓発・権利保護支援などの活動を展開している非営利団体です。BSAは急成長を遂げるビジネスソフトウェア 業界をリードする企業で構成されています。1988年の米国での設立以来、常に政府や国際市場に先駆け、世界のビジネスソフトウェア業界とそのハードウェア・パートナーの声を代表する組織として活動をつづけています。BSAのメンバーにはアドビシステムズ, アジレント・テクノロジー, アルティウム, アップル, オートデスク, アビッドテクノロジー, BEAシステムズ, ベントレー・システムズ, ボーランド, Breault Research Organization, CA, ケイデンス・デザイン・システムズ, シスコシステムズ, CNC Software/Mastercam, デル, EMC, エントラスト, Frontline PCB Solutions- An Orbotech Valor Company, HP, IBM, インテル, アイナステクノロジー, マカフィー, マイクロソフト, Mindjet, Minitab, Monotype Imaging, PTC, SAP, ソリッドワークス, SPSS, サイベース, シマンテック, シノプシス, テクラ, The MathWorks, トレンドマイクロ および UGS が加盟し活動を行なっています。詳しくは、BSA日本ウェブサイトwww.bsa.or.jpまたは、BSA米国本部ウェブサイトwww.bsa.org/usa/(英語)をご覧ください。

<添付資料?>

EIU「競争のための手段−IT産業競争力のベンチマーク」調査より 日本のパフォーマンスについての解説

「EIU IT競争力指標」総合ランキング

世界ランク APランク 国名 スコア
1 - 米国 77.4
2 1 日本 72.7
3 2 韓国 67.2
4 - イギリス 67.1
5 3 オーストラリア 66.5
6 4 台湾 65.8
7 - スウェーデン 65.4
8 - デンマーク 64.9
9 - カナダ 64.6
10 - スイス 63.5
11 5 シンガポール 63.1
12 - オランダ 62.9
13 - フィンランド 62.7
14 - ノルウェー 59.7
15 - アイルランド 58.6
16 - ドイツ 58.2
17 - ニュージーランド 57.5
18 - フランス 55.8
19 - オーストリア 55.3
20 - イスラエル 54.5

※全ランキング(64カ国)については、調査資料参照


日本に関する総括



●総合スコア:72.2(世界2位、アジア1位)
  • 主な差別化要因は、世界一を誇る驚異的な研究開発スコアであり、他の先進国を大きく引き離している
  • 労働生産性は、アジアで台湾、韓国、シンガポール、オーストラリアに続く5位、世界では8位

●改善を要する比較的弱い分野
  • 総合的なビジネス環境(世界24位、アジア6位)
  • ITインフラ(世界17位、アジア5位)
  • 法的環境(世界18位、アジア4位)
  • IT産業に対する支援(世界18位、アジア5位)

労働生産性

IT従事者1人当たりのハードウェアおよびソフトウェア生産高


「EIU IT競争力指標」総合ランキング

総合的な
ビジネス環境(10%)
ITインフラ(20%) 人的資本(20%) 法的環境(10%) 研究開発環境(25%) IT産業発展支援(15%)
香港 スイス 米国 米国 日本
(1位)
デンマーク
米国 カナダ シンガポール イギリス 韓国 ノルウェー
アイルランド 米国 イギリス アイルランド 台湾 シンガポール
イギリス オーストラリア オーストラリア オーストラリア 米国 米国
チリ オランダ 韓国 デンマーク スウェーデン カナダ
デンマーク デンマーク アイルランド オランダ フィンランド オーストラリア
オーストラリア イギリス 台湾 フィンランド ドイツ オランダ
ニュージーランド スウェーデン ニュージーランド ノルウェー デンマーク スイス
シンガポール 韓国 日本
(9位)
ドイツ イスラエル フィンランド
オランダ ノルウェー フィンランド オーストリア オランダ アイルランド
台湾 香港 カナダ ベルギー イギリス イギリス
スウェーデン シンガポール イスラエル フランス オーストラリア 香港
カナダ ドイツ スウェーデン スイス ノルウェー ニュージーランド
スイス オーストリア ノルウェー カナダ フランス スウェーデン
フィンランド フィンランド スロベニア スウェーデン スイス ベルギー
ドイツ フランス スペイン シンガポール オーストリア チリ
ベルギー 日本
(17位)
フランス ニュージーランド シンガポール オーストリア
ポルトガル 台湾 デンマーク 日本
(18位)
カナダ 日本
(18位)
フランス ニュージーランド イタリア スペイン ニュージーランド 台湾
オーストリア イスラエル オランダ イスラエル アイルランド 韓国
イスラエル ベルギー ベルギー 香港 ベルギー フランス
エストニア アイルランド ポルトガル イタリア イタリア スペイン
ハンガリー エストニア ロシア ポルトガル スロベニア エストニア
日本
(24位)
ポルトガル ギリシャ ハンガリー ハンガリー イタリア

カテゴリー別・日本のパフォーマンスについて

ビジネス環境

  • 日本のスコアは、全カテゴリーの中で最も低い82.0だった。
    • 対外国資本政策、文化的な受容力
    • 財産権および契約上の権利の厳格な行使
    • 広く行き渡っている公式/非公式な慣行によって、既存の市場参加者が保護されている。

  • 政府が海外からの対内投資の効果を疑問視している。
    • 海外直接投資促進プログラムは、 GDPにおける外国投資の割合を2010年までに1%から5%に上昇させることを目指している。
    • 日本が海外からの影響をもっと受け入れない限り、上記の目標の達成は困難と思われる。

  • IT産業は、 国際的企業との技術提携の増加による恩恵を享受している。
    • 日本が、もっとオープンかつリベラルな経済を反映したビジネス環境を整えるよう促すことができる。
    • 高度な研究などの拡充:MSN、IBM、シスコ、グーグル、AMDといった米国企業は、日本のパートナーとの共同研究に資金を投じている。

ITインフラ

  • 日本のスコアは52.3だった。
    • 6カテゴリーの中で最低のスコア。

  • 普及度
    • 2006年の1,000人当たりのPC所有数は560.7台で、 1,000人当たり837.6台の韓国(スコアは61.7)を下回った。
    • 大手ブランドがひとたび電子商取引に着手すれば、韓国同様、サプライチェーン全体が即座に追随すると思われる。

  • 電気通信
    • 2001年の自由化以降、 ブロードバンドは急拡大し、普及度は20.6%に達している。
    • ITUによれば日本のブロードバンド月額料は世界最安であるため、さらなる普及拡大が見込まれる。

人的資本

  • 日本のスコアは67.4だった。
    • 研究者の割合はトップであるものの(1,000人当たり6.2人)、技能開発の面でシンガポール(84.9)、韓国(74.8)に遅れを取らないようにする必要がある。

  • 日本同様、シンガポールと韓国も高齢化に直面している。
    • シンガポール:優れた技能を持つ移民労働者が増加している。
    • 韓国:GDPの7%を教育に費やしている 。(OECD諸国の中で最高)

  • 日本では労働人口の減少が見込まれている。
    • 2004年の6,330万人から、2015年には6,000万人に、2030年までには5,320万人に減少する見込み。
    • 技能開発と女性の登用を推進し、パート従業員を動因し、定年を60歳から65歳へ引き上げている。

法的環境

  • 日本のスコアは79.0だった。
    • しかし総合的なシステムは、国際的慣行に適合しているオーストラリア(87.0)やシンガポール(80.5)といった大半の先進国を下回った。

  • WTO加盟国および米国の同盟国である効果
    • 日本の特許庁が特許法およびその他の知的財産法を改正した。
    • 法改正では、審査の迅速化と特許の行使の改善に焦点を当てるとともに、日本の特許法をTRIPS協定に適合させた。
    • 特許および知的財産権関連の訴訟の処理を迅速化すべく、2005年に知的財産高等裁判所が設立された。

  • 知的財産戦略本部は、知的財産法の制定に対する政府の関与を強化することを示唆している。
    • 助言的なアプローチが誘因となり、世界的な動向の認識につながっている。

  • 日本は、国際水準との調和という点で遅れを取っている。

研究開発

  • 研究開発スコアは84.3という驚異的な数字を記録した。
    • 日本は、このカテゴリーでは韓国(56.6)、台湾(54.8)、およびその他の先進国に大きな差をつけている。

  • 日本では研究開発に対して積極的に資金が投入されている。
    • その額はGDPの3.5%に相当し、世界一を誇っている。

  • 2006年の研究開発支出の合計は1,400億米国ドルで、そのうち情報通信機器に対するものは282億米国ドルで、全体の20.2%を占めている。
    • 最大項目

  • 日本の戦略は他国の見本となっている。
    • 高水準のIT支出 、積極的な民間部門、大学と民間部門間の密接な連携、研究開発を促すための免税制度

<添付資料?>

BSAの政策提言活動のリスト

世界のBSAの政策提言活動

ワシントンDCを拠点とするグローバルな活動

  • 啓発活動、意見交換、ステートメントの提出、調査活動。

    <調査活動>

    • IDCに委託し「世界ソフトウェア違法コピー調査」(毎年5月15日頃発表)、「世界経済効果調査」(2005年)、「違法コピー経済インパクト調査」(2003年)を発表している ※BSAホームページよりダウンロード可能
    • 今回、英国のエコノミスト誌の調査機関であるEIUに委託したICT競争力調査(「IT産業競争力のベンチマーク」)実施は新しい試み。

主な政策課題

  • ソフトウェアイノベーションと競争環境の整備
  • 知的財産権の保護
  • サイバーセキュリティー
  • 貿易障壁の撤廃
  • 暗号化技術の利用促進

日本の政策提言活動

グローバルな活動とシンクし、IT業界のイノベーション促進や発展のための環境を確保

  • 政策決定者との対話、パブリックコメントの提出、調査と分析

日本での主な政策課題

  • イノベーションの促進
  • 著作権の保護と新しい問題への対応
  • セキュリティー
  • 電子商取引

日本の他の団体とも協業

【加盟団体】

  • 不正商品対策協議会(ACA)
  • 国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)
  • コンテンツ海外流通促進機構(CODA)
  • 不正商品問題連絡協議会(JCCI)
  • 財団法人ソフトウェア情報センター (SOFTIC)
  • プロバイダ責任制限法ガイドライン等協議会著作権WG(オブザーバー)

今後の活動予定

政策決定者との対話、パブリックコメントの提出、調査と分析

EIU委託のIT競争力調査のテーマも掘り下げて議論

  • 11月22日、国際CIO学会秋季大会 セッションIII
    於:早稲田大学小野講堂