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■2003/06/03
昨年の日本の違法コピー率は2ポイント減の35%
-〜依然 高水準にとどまる〜アジア太平洋地域全体では損害額が過去最悪に-

コンピュータソフトウェアの権利保護団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス (Business Software Alliance、以下BSA、本部:米国ワシントンDC、会長:ロバート・W・ハリマン)は6月3日、全世界および各国・地域における2002年1月〜12月のコンピュータソフトウェアの違法コピーに関する調査結果を発表しました。2002年の日本の違法コピー率は前年より2ポイント低下して35%となり、損害額は前年比14.4%減の14.7億米ドル(約1,748億円)となりました。違法コピー率は若干低下したものの、最低の違法コピー率だった1998、1999年の31%と比べるとまだ高い水準にあることから、BSA日本事務局では「引き続き粘り強い違法コピー防止のための啓発活動が必要だ。企業や団体において、さらなるコンプライアンス意識の浸透を期待したい」としています。

調査結果によると、全世界の違法コピー率は、2001年より1ポイント低下して39%に、損害額は2001年の109億米ドル(約1兆3,024億円)から19%増加して、130億米ドル(約1兆5,516億円)となりました。地域別では、西ヨーロッパ、北米、中南米で違法コピー率が低下し、中東・アフリカでは横ばい状態で、世界的な低下傾向にありますが、アジア太平洋地域および東ヨーロッパでは上昇しました。

中でも、アジア太平洋地域全体の違法コピーによる損害総額は55億米ドル(約6,505億円)に達し、調査が始まった1994年以来、過去最高を記録しました。同地域の平均違法コピー率は55%で、1996年以来の高い数字となりました。同地域では、損害総額、平均違法コピー率ともに1999年以降、連続して増加しています。

BSAでは、独立系の調査会社インターナショナル・プランニング・アンド・リサーチ(International Planning and Research=IPR)に委託して、1994年から毎年、世界の違法コピー率を調査しており、今年で8回目となります。26種類のビジネス用のアプリケーション・ソフトウェアを対象として、世界85か国・地域におけるソフトウェアの売上データとマーケット情報に基づき、違法コピー率および違法コピーによる経済的損害額を算出しています。

日本の違法コピー率と損害額
2002年の日本の違法コピー率は前年より2ポイント低下して35%となり、損害額は前年比14.4%減の14.7億米ドル(約1,748億円)でした。違法コピー率、損害額ともに減ったものの、日本の損害額はまだ中国、米国に次いで世界第3位となっています。日本の違法コピー率は1995年から1999年にかけて連続して下落し、同年には31%まで低下しましたが、翌2000年には37%まで上昇し、2001年も横ばいの37%でした。2002年になって、3年ぶりに低下したことになります。損害額は、1995年から1998年にかけて連続して減少し、同年には5.9億米ドル(約708億円)の最低額となりましたが、1999年から2001年にかけては上昇に転じ、同年には17.2億米ドル(約2,042億円)の最高額を記録しました。

今回の結果について、BSA日本事務局では、高速インターネットの普及などによるインターネットを介した違法コピーが依然として増加傾向にある一方、企業のコンプライアンスに対する意識が高まり、ソフトウェア資産管理に真剣に取り組むケースが増えてきたことや、コンピュータの販売数が伸び悩んでいることなどの理由から、結果的に違法コピー率、損害額ともに減少に転じたと分析しています。しかし、1990年代後半と比較すれば、違法コピー率、損害額ともに高い水準に落ち着いています。大規模な企業や組織でソフトウェア管理が強化される一方で、一部の企業・団体では依然として日常的、確信的に違法コピーが行われ、これが引き続き日本におけるソフトウェア著作権侵害の大きな要因となっているためです。このため、BSA日本事務局では、著作権侵害についての啓発活動をさらに粘り強く行っていくことにしています。

全世界の違法コピー率と損害額
世界のソフトウェアの違法コピー率は、過去最高だった1994年の49%から、昨年は39%まで低下しました。世界の違法コピーによる損失額は2001年の109億ドルから、2002年には130億ドルに増加していますが、この19%の増加はソフトウェア価格の上昇が原因と考えられます。

2002年は、調査が始まった1994年と比べ、世界の6大地域すべてで違法コピー率が低下しました。第1回の調査結果と比較すると、ジンバブエを除く世界中のすべての国で違法コピー率が減少していました。米国の違法コピー率は、過去最低の23%となり、現在、世界で最も低い違法コピー率となっています。

BSAのロバート・ハリマン会長は「私たちが最初の調査結果を発表した時と比べ、世界の違法コピー問題が大きく改善されており、これは歓迎すべきことです。この傾向は、ソフトウェア業界による啓発活動や、各国政府と連携しての著作権法の強化、安全で正当なデジタル社会に貢献するソフトウェア資産管理手法の普及といった活動が功を奏しているためと考えられます。しかし、インターネットを利用した違法コピーは増加しており、注意を払う必要があります。違法コピー率をさらに低下させるためには、啓発活動と権利擁護活動の一層の強化が必要です」と述べています。

違法コピー率の算出方法
新規購入されたコンピュータにインストールされるソフトウェアの本数(=需要)と、正規に出荷されたソフトウェアの本数(=供給)との差が、違法コピーされたソフトウェアの数に相当すると考えられます。違法コピー率は、違法コピーされたソフトウェアの数を、インストールされたソフトウェアの総数で割った百分率として算出しています。算出のもととなるデータは、BSAのメンバー企業と、テクノロジー分野のマーケット・リサーチ会社であるメタ・ファクト社から提供されたものを利用しています。

BSAとは
BSAは、アドビシステムズアップルオートデスクベントレー・システムズボーランドCNCソフトウェア/マスターキャム、マクロメディアマイクロソフトネットワーク・アソシエイツノベルシマンテックなど、大手ビジネスソフトウェア会社で組織する非営利団体です。世界の65以上の国・地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。BSAは、エンドユーザー向けにソフトウェアの著作権保護と効率的管理への理解を深めるための活動、著作権教育の支援活動などのほか、日本をはじめとする全世界で、業界団体や各種公的機関と連携して活動を展開しています。

日本では、株式会社ジャストシステム、株式会社モリサワが権利執行活動に協力しており、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)ともソフトウェアの違法コピー防止を目的とした教育・啓発活動で連携しています。組織内違法コピー撲滅を目指し、ソフトウェア著作権に対する理解促進のため、企業や組織のコンピュータ管理者向けセミナーや教育用CD-ROMの配布、経営者向けのセミナーやダイレクトメール、学校や社内掲示用ポスターの配布などの教育・啓発活動を展開しているほか、ユーザーの著作権保護に対する認知向上を図る活動を行っています。また組織内違法コピーの撲滅のため、権利者の民事的な解決のサポートも行っています。さらに、増えつづけるインターネット上の違法コピー問題を解決するため、官公庁、業界団体へも積極的に提言しています。違法コピーに関する情報の一般からの提供を促すことを目的に、テレビ広告や交通広告によるキャンペーンも実施しています。BSA日本事務局では、これらの取組みを通じて、さまざまな立場のユーザーに違法コピー問題解決の必要性を訴え、違法コピー対策に不可欠なユーザーからの違法コピー情報の提供を促しています。

BSAでは、組織内違法コピーに関する情報を違法コピーホットライン(電話0120-79-1451=なくそう違法行為)、電子メール(hotline@bsa.or.jp)、ウェブサイト(http://www.bsa.or.jp) を通じて受付けています。詳しい活動内容は、ウェブサイトに掲載しています。

【1】世界各地域の概要
中東およびアフリカ:中東およびアフリカは、違法コピー減少に最も成功した地域で、1994年の80%から2002年の49%へと違法コピー率を31ポイント減らしました。中東では、すべての国の違法コピー率の改善により、違法コピー率が1994年の84%から2002年の50%となり、34ポイント低下しました。違法コピー率が最も改善した国はアラブ首長国連邦で、1994年の86%から2002年の36%へと、50%ポイントも低下しました。アフリカの違法コピー率は、1994年の77%から2002年の48%へと29ポイント低下しました。南アフリカは、1994年の64%から2002年の34%まで30ポイント低下しました。エジプトは、1994年の84%から、2002年の52%まで32ポイント低下し、アフリカで最も改善された国となりました。

中南米:中東およびアフリカに続いて2番目に改善した地域は中南米で、1994年から2002年の間に23ポイント低下しました。グアテマラは1994年の94%から2002年の61%まで33ポイント低下し、最大の改善国となりました。エルサルバドルは1994年の97%から2002年の68%まで29ポイント違法コピー率が低下しました。コスタリカとドミニカ共和国はそれぞれ28ポイント低下しました。両国は1994年の89%から2002年の61%まで低下しました。ラテンアメリカ最大の国であるブラジルは22ポイント、メキシコは23ポイント低下しました。ブラジルは1994年の77%から2002年には55%まで低下し、メキシコは1994年の78%から2002年には55%まで低下しました。

西ヨーロッパ:西ヨーロッパの違法コピー率は、52%から32%へと17ポイント低下し、すべての地域の中で3番目に違法コピー率の引き下げに成功した地域となりました。最も改善した国はアイルランドで、1994年の74%から2002年の42%まで低下しました。続いてスペインが77%から47%まで30ポイント低下しました。フィンランドとオランダはそれぞれ28ポイント低下し、スイスは1994年には西ヨーロッパ諸国で最も違法コピー率が低い国でしたが、2002年までにさらに6ポイント引き下げ、32%になりました。スイスは、現在でも西ヨーロッパの違法コピー率の平均(35%)を下回っています。しかし、デンマークは2002年に24%を記録し、スイスを大幅に下回りました。

東ヨーロッパ:東ヨーロッパは1994年の85%から2002年の71%まで14ポイント違法コピー率が低下し、4番目に違法コピー率の改善に成功した地域になりました。スロヴェニアが最も改善に成功した国で、96%から59%へと37ポイント低下しました。続いてハンガリーが1994年の76%から2002年の45%へ、31ポイント低下しました。ロシアの違法コピー率は、1994年の95%から2002年の89%に6ポイント改善がみられただけでした。また、ウクライナも95%から89%へと6ポイント低下しただけでした。

アジア太平洋地域:アジア太平洋地域の違法コピー率は、1994年の68%から2002年の55%へと13ポイント低下しました。日本はこの地域で最も改善のみられた国で、1994年の66%から2002年の35%まで低下しています。続いて台湾が1994年の72%から2002年の43%へと29ポイント低下しました。フィリピンは1994年の94%から2002年の68%へと26ポイント低下しました。韓国は1994年の75%から2002年の50%へと25ポイント低下しました。

北米:北米は違法コピー率が最も低くなっている地域で、1994年の32%から2002年には24%へと低下しました。2002年に23%を記録した米国は、1994年の31%から8ポイント低下し、世界で最も違法コピー率が低い国になっています。カナダの違法コピー率は39%で、1994年の46%から7ポイント低下しました。

【2】各地域の違法コピー率の低下

各地域の違法コピー率の低下 (1994年-2002年)
1994 2002
中東/アフリカ 80% 49%
中南米 78% 55%
西ヨーロッパ 52% 35%
東ヨーロッパ 85% 71%
アジア太平洋 68% 55%
北米 32% 24%

【3】世界地域別の違法コピーによる損害額 (2002年1月〜12月)

損害額 (百万米ドル) 世界の損害額に占める割合
西ヨーロッパ 3,190.9 24.4%
東ヨーロッパ 1,025.6 7.8%
北米 2,267.1 17.3%
ラテンアメリカ 824.2 6.3%
アジア太平洋 5,481.8 41.9%
アフリカ・中近東 285.4 2.1%
全世界合計 13,075.3 100%

【4】アジア太平洋地域におけるコンピュータソフトウェアの違法コピーによる損害額および違法コピー率 (1996−2002年)

国名 損害額 (百万米ドル)
1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
オーストラリア 128.3 129.4 192.2 150.4 132.5 91.0 138.5
中華人民共和国 703.8 1,449.5 1,193.4 645.5 1,124.4 1,662.4 2,407.7
香港 129.1 122.2 88.6 110.2 86.2 164.0 82.3
インド 255.3 184.7 197.3 214.6 239.6 365.3 342.5
インドネシア 197.3 193.3 58.8 42.1 70 79.5 138.3
日本 1,190.3 752.6 596.9 975.4 1,666.3 1,721.1 1,473.2
韓国 515.5 582.3 197.5 197.3 302.9 186.6 425.4
マレーシア 121.5 82.6 79.3 84.2 95.6 94.5 99.5
ニュージーランド 29.3 20.3 21.8 19.7 12.4 11.4 6.4
パキスタン 23.1 20.4 22.7 18.9 31.4 11.4 13.8
フィリピン 70.7 49.2 31.1 33.2 27.1 24.7 37.8
シンガポール 56.6 56.6 58.3 61.8 44.3 41.8 31.9
台湾 117.0 136.9 141.3 122.9 154.8 136.7 113.3
タイ 137.1 94.4 48.6 82.2 53.1 41.1 81.9
ベトナム 15.2 10.1 10.3 13.1 34.9 32.2 49.2
その他の地域 49.1 32.0 16.7 20.3 7.6 62.6 40.1
アジア太平洋地域合計 3,739.3 3,916.2 2,954.8 2,791.5 4,083.1 4,726.5 5,481.9
全世界合計 11,306.3 11,440.1 10,976.5 12,163.2 11,750.4 10,967.3 13,075.3

 

国名 違法コピー率(%)
  1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002
オーストラリア 32% 32% 33% 32% 33% 27% 32%
中華人民共和国 96% 96% 95% 91% 94% 92% 92%
香港 64% 67% 59% 56% 57% 53% 56%
インド 79% 69% 65% 61% 63% 70% 70%
インドネシア 97% 93% 92% 85% 89% 88% 89%
日本 41% 32% 31% 31% 37% 37% 35%
韓国 70% 67% 64% 50% 56% 48% 50%
マレーシア 80% 70% 73% 71% 66% 70% 68%
ニュージーランド 35% 34% 32% 31% 28% 26% 24%
パキスタン 92% 88% 86% 83% 83% 83% 80%
フィリピン 92% 83% 77% 70% 61% 63% 68%
シンガポール 59% 56% 52% 51% 50% 51% 48%
台湾 66% 63% 59% 54% 53% 53% 43%
タイ 80% 84% 82% 81% 79% 77% 77%
ベトナム 99% 98% 97% 98% 97% 94% 95%
その他の地域 86% 83% 74% 71% 75% 70% 69%
アジア太平洋地域合計 55% 52% 49% 47% 51% 54% 55%
全世界合計 43% 40% 38% 36% 37% 40% 39%

【5】違法コピー率が高い上位10か国

  国名 2001年(%) 2002年(%)
1 べトナム 94 95
2 中国 92 92
3 その他CIS諸国 88 90
4 インドネシア 88 89
5 ロシア 87 89
6 ウクライナ 86 89
7 パキスタン 83 80
8 ニカラグラ 78 77
9 タイ 77 77
10 バーレーン 77 76

【6】違法コピーによる損害額が多い上位10か国

  国名 損害額(百万米ドル) 各国違法コピー率(%)
1 中国 2,407.7 92%
2 アメリカ 1,960.7 23%
3 日本 1473.2 35%
4 ドイツ 934.4 32%
5 フランス 663.5 43%
6 イタリア 510.6 47%
7 ロシア 492.5 89%
8 韓国 425.4 50%
9 ブラジル 395.8 55%
10 インド 342.5 70%

この調査の詳しい情報は、BSA本部のウェブサイト(http://www.bsa.org 英語のみ)に掲載しています。
違法コピー損害額について、ドル表示の後の日本円の換算は、2003年6月2日現在の為替レートによります。

2003年世界違法コピー率調査(英語)はこちらから!