■2001/05/16
東京地裁、ソフトウェアの組織内不正コピーによる著作権侵害を認める初の判決
-被告の大手司法試験予備校(株)東京リーガルマインドに8472万400円の損害賠償支払命令-
コンピュータソフトウェアの権利保護を目的とした非営利団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、以下 BSA、本部:米国ワシントンD.C.、会長:ロバート・W・ハリマン)の会員企業である大手ソフトウェアメーカー3社が、2000年4月19日に大手司法試験予備校である株式会社東京リーガルマインドに対し、コンピュータソフトウェアの組織内での不正コピーによる著作権侵害を理由に、損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が、5月16日に東京地方裁判所でありました。東京地裁(飯村敏明裁判長)は、被告企業が、ソフトウェアの組織内不正コピーにより、原告3社の著作権を侵害していたことを認める判決を下し、不正コピーが発覚した後に正規品を購入すれば、過去に不正コピーをしていた分についての損害賠償を一切支払う必要はないという被告企業の主張を「失当である」として全面的に否定し、被告である大手司法試験予備校(株)東京リーガルマインドに8472万400円の損害賠償の支払いを命じました。
今回の判決は、組識内不正コピーによる著作権侵害に関する日本では初めての判決となります。裁判所が原告の主張である組識内不正コピーによるソフトウェアの著作権侵害の重大性を認定したこの判決結果は、今後の日本において著作権保護を強化するうえで大きな進歩といえます。 今回、東京リーガルマインドを提訴したのは、アップル・コンピュータ・インコーポレーテッド(本社:米国カリフォルニア州クパティーノ市)、アドビ・システムズ・インコーポレーテッド(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ)およびマイクロソフト・コーポレーション(本社:米国ワシントン州レドモンド市)です。原告3社とも、日本の現地法人が、10年以上にわたり日本で活動を展開し、日本のIT産業発展の一端を担ってきました。
東京地裁は、判決の中で、被告企業による組織内不正コピーによる著作権侵害を認め、
- 不正コピーが発覚した後に正規品を購入すれば、過去に不正コピーをしていた分についての損害賠償を一切支払う必要はないといった被告企業の主張を「失当である」として全面的に否定し、
- 損害賠償額の算定にあたっては、著作権侵害されたソフトウェア製品の正規品小売価格を算定基準として認め、
- 不正コピーの数についても、1999年5月に被告企業が経営する校舎の一つで行われた証拠保全手続きにおいて検証されたソフトウェアの数以上の不正コピーが行われているとの判断が適用されました。
原告3社は、この判決内容について、裁判所が初めてソフトウェアの組織内不正コピーに対し、著作権の侵害だと認めたという点、および損害が一切発生していないという被告の主張を「失当である」として退けた点で、今後の著作権保護を強化するうえでも、大変評価できる内容であると受け止めています。
ソフトウェアの不正コピーは、ソフトウェアメーカーに対して損害を与えるだけでなく、コンピュータ・ウィルスの蔓延など、最終的にはエンドユーザーにも深刻な損害をもたらします。また、流通・販売業者の事業を困難にしているほか、ソフトウェア開発者の新規開発に対する意欲も損なうものです。さらに、ソフトウェアは情報化社会の基盤をなすものであり、不正コピーは、IT化の促進を妨げることにもなります。本判決は、日本のIT化促進に大きく貢献するものと、原告各社は、本判決を歓迎しています。
ビジネス ソフトウェア アライアンスの日本担当事務局長は、「今回の判決は、裁判所が初めて組織内不正コピーによるソフトウェアの著作権侵害を認定した点で、ソフトウェア業界のみならず、情報産業全体に大変意義があるものと思っています。ソフトウェアは情報化社会の基盤をなすものであり、情報化社会を実現し、また情報産業がこれからの日本の経済繁栄に貢献していくためには、著作権などの知的財産権の保護強化によって権利者の権利が正しく保護されることが極めて重要です。」と述べています。
上記訴訟は、第一審判決を踏まえた東京高等裁判所の和解勧告を受け入れ、以下のとおり和解いたしました。
共同発表文 |
アドビ・システムズ・インコーポレーテッド、アップル・コンピュータ・インコーポレーテッド及び マイクロソフト・コーポレーションと株式会社東京リーガルマインドは、東京地方裁判所が平成13年5月16日にした判決(平成12年(ワ)第7932号損害賠償請求事件)の控訴審において、第一審判決を踏まえた東京高等裁判所の和解勧告を受け入れ、平成14年 12月11日、円満に和解しました。 株式会社東京リーガルマインドは、コンピュータ・ソフトウェアの適正な管理・利用を図り、 違法行為の発生を防止することを含めて、行動基準をすでに策定・実施しており、これを遵守し、社内に徹底させることを表明しています。 和解の内容及び経緯については、東京高等裁判所において成立した和解の条項に従い、 公表しません。 |
平成14(2002)年12月11日 |
アドビ・システムズ・インコーポレーテッド
アップル・コンピュータ・インコーポレーテッド マイクロソフト・コーポレーション |
株式会社東京リーガルマインド |
(参考)
BSAは、エンドユーザー向けにソフトウェアの著作権保護と効率的管理への理解を深めるための活動を行っています。無料セミナーの開催、監査ツールの配布、著作権教育の支援活動、小中高校生対象のコンテスト開催などをはじめ、各種公的機関、業界団体との連携による活動を日本を含む全世界で展開しています。BSAは、アドビ システムズ、アップル、オートデスク、ベントレー・システムズ、CNC ソフトウェア/マスターカム、マクロメディア、マイクロソフト、ネットワーク・アソシエイツ、ノベル、シマンテック、UGSなど大手ビジネスソフトウェア会社が組織する非営利団体です。世界65カ所以上の国や地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。日本においては、株式会社ジャストシステムがBSAの活動に参加しているほか、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)とも教育・啓発活動などで連携しています。BSAは、違法コピーホットライン(0120-79-1451 <なくそう、違法行為>)と電子メール(hotline@bsa.or.jp)で違法コピーの通報を受付けています。BSAに関する情報はホームページ(http://www.bsa.or.jp)に掲載されています。
日本におけるソフトウェアの違法コピーは、1999年には31%でしたが、2000年、2001年には37%と悪化しています。また2001年の日本の損害額は2000年から5,500万米ドル増加して17.2億米ドルになり1995年の調査開始以来最高額になりました。
BSAは、今後とも、組織内違法コピーの撲滅に向けて、積極的に活動してまいります。
* 記載の社名および製品名は、各会社の商標または登録商標です。
本件に関するお問い合わせ先 |
TMI総合法律事務所 |
弁護士 石原 修 |
同 中田 俊明 |
TEL : 03-5472-8511 |
(1)BSAとSIIA(Software & Information Industry Association)の委託によってIPR(International Planning and Research)が調査した1999年1-12月における違法コピー率。