■2000/05/29
1999年の全世界のソフトウェアの違法コピー率は
36%被害総額は122億米ドル
-昨年比 12億米ドル増加、過去 5年間の総損害額は 592億米ドル以上に-
コンピュータソフトウェアの権利保護団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、以下BSA、本部:米国ワシントンDC、会長:ロバート・W・ハリマン)とソフトウェア・アンド・インフォメーション・インダストリー・アソシエーション(Software & Information Industry Association, SIIA)が発表した全世界における1999 年 1 月〜 12 月のコンピュータ・ソフトウェアの違法コピーに関する調査によると、1999 年の全世界の違法コピー率は、昨年より2 %低下して 36 %に、損害額は、1998 年の 110 億米ドルから 12 億米ドル増加の 122 億米ドルになりました。日本の違法コピー率は昨年同様の 31 %でしたが、損害額は前年比 3.8 億米ドル増加の、 9.8 億米ドルになりました。
同調査は、BSA と SIIA の委託により、インターナショナル・プランニング・アンド・リサーチ(International Planning and Research、以下IPR)が実施したものです。調査対象は、BSA と SIIA 両団体のメンバー企業のソフトウェア製品のなかで、オペレーティング・システムとクライアント/サーバ・アプリケーションを除く、26 種類のビジネス・アプリケーションです。それらの売上データと市場情報にもとづき、世界 6 大地域における 85 ヶ国のソフトウェア市場における違法コピー率と、違法コピーによる金銭的な損害を算出しました。
BSA のロバート・ハリマン会長は、今回の調査結果に関して「違法コピーによる損害が莫大なため、ソフトウェアメーカーは、給与、税収、新技術の開発・導入に十分な資金を投入できず、またソフトウェア産業の発展に必要となる有能な人材を雇用することができません。また、インターネットの爆発的に成長によって、だれもが簡単に違法にコピーされたソフトウェアを配付したりダウンロードできるようになりました。マウスをクリックするだけで即座に、違法コピーという窃盗行為を世界規模で行うため、違法コピーの数は急速に増加しています。ソフトウェア産業は、このような大規模な窃盗行為を黙認することはできません。 BSAは、こうした環境において、ユーザの教育や法的手段による権利執行活動に力を入れるだけでなく、世界各国の政府に対してこの重大な問題に率先して取り組むよう働きかけを続けます」と述べました。
SIIAのケン・ウォッシュ社長は「コンピュータ・ソフトウェアは、ビジネスのあり方を根本から変え、デジタル経済の発展に重要な役割を果たしています。その一方で全世界の相当数の企業が、違法にコピーしたソフトウェアを使って通信、取引、業務運営の管理などを続けており、ソフトウェア産業の利益を奪っています。自国の著作権法を尊重せず、ソフトウェアの正当な価値を認めず、そしてその対価を支払わない企業や組織に対しては、彼らが奪っている利益以上の罰金を課す必要があります」と述べました。
世界の違法コピー状況
今回の調査によれば、違法コピーによる世界中のソフトウェア業界への被害額は、122億米ドルと推計されます。損害の大半(83%)は、世界のソフトウェア使用の大半をしめる北米(36億米ドル)、西欧(36億米ドル)、アジア(28億米ドル)での違法コピーによるものです。
地域別にみると、違法コピー率が最も高かったのは、前年に引き続き東欧地域で 70 %(前年 76 %)でした。アメリカ、カナダを含む北米地域の違法コピー率は 26 %と世界で最も低かったものの、損害額は 36 億米ドルで世界最高でした。アジア太平洋地域の違法コピー率は、前年度比 2 %ポイント減少の 47 %、損害額は、前年度 1.6 億米ドル減少の 28 億米ドルでした。
国別では、ベトナム( 98 %)と中国( 91 %)が目立って高く、ロシアをのぞくCIS(独立国家共同体)( 90 %)、ロシア( 89 %)、オマーン、レバノン( 88 %)、インドネシア、ボリビア( 85 %)でした。違法コピー率の低い国は、米国( 25 %)、イギリス( 26 %)、ドイツ( 27 %)、デンマーク( 29 %)、フィンランド( 30 %)、日本、ニュージーランド( 31 %)という結果となりました。(注・1)
日本の違法コピー
1999年の日本の違法コピー率は 31 %で、1998 年と同率でした。日本はアジア地域で違法コピー率が最も低い国ですが、損害額は 6 億米ドルから 9.8 億米ドルへ急増しました。この損害額はアジア地域最高であり、アジアにおける違法コピー損害額の 35 %を占めています。BSA 副会長のパメラ・パスマンは「違法コピー率に変化がなかったにもかかわらず、損害額が2倍近くまで増加しました。大規模な企業や組織においてソフトウェア管理が強化されている一方、一部の企業で確信的、継続的に違法コピーをしていることが原因とみられます。また、コンピュータ市場の成長やインターネット利用の増大も違法コピーの大きな原因となっています。BSAでは、ソフトウェア著作権の認知度向上のための教育・啓蒙活動のほか、違法コピーを行う企業や組織に対してソフトウェアメーカーの権利保護を訴えていきます。さらに今後は日本の組織内違法コピーの撲滅活動を推進するとともにインターネット上の違法コピーへの取り組みを強化していきます」と述べました。
BSAについて
BSAは、アクトラック21、アドビシステムズ、アップル、アタッチメイト、オートデスク、ベントレー・システムズ、インプライズ、ロータスデベロップメント、マクロメディア、マイクロソフト、ネットワーク・アソシエイツ、ノベル、シマンテックなど大手ビジネスソフトウェア会社が組織する非営利団体です。世界65カ所以上の国や地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。日本においては、株式会社ジャストシステムが活動に参加しているほか、 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 とも調査並びに教育・啓発活動で連携しています。 BSAは、違法コピーホットライン(0120-79-1451 <なくそう、違法行為>)と電子メール(hotline@bsa.or.jp)で違法コピーの通報を受付けています。BSAに関する情報はホームページ(http://www.bsa.or.jp)に掲載されています。
(注・1) この調査の詳しい情報は、BSA本部のウェッブサイト(www.bsa.org 英語のみ)に掲載しています。
【1】アジア・太平洋地域における、コンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害行為による損害額および違法コピー率(IPR推計)
国名 | 損害額 (100万米ドル) | 違法コピー率(%) | ||||||||
1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | |
オーストラリア | 198.1 | 128.3 | 129.4 | 192.2 | 150.4 | 35% | 32% | 32% | 33% | 32% |
中華人民 共和国 |
443.9 | 703.8 | 1,449.5 | 1,193.4 | 645.5 | 96% | 96% | 96% | 95% | 91% |
香港 | 122.9 | 129.1 | 122.2 | 88.6 | 110.2 | 62% | 64% | 67% | 59% | 56% |
インド | 155.6 | 255.3 | 184.7 | 197.3 | 214.6 | 78% | 79% | 69% | 65% | 61% |
インドネシア | 150.9 | 197.3 | 193.3 | 58.8 | 42.1 | 98% | 97% | 93% | 92% | 85% |
日本 | 1,648.5 | 1,190.3 | 752.6 | 596.9 | 975.4 | 55% | 41% | 32% | 31% | 31% |
韓国 | 675.3 | 515.5 | 582.3 | 197.5 | 197.3 | 76% | 70% | 67% | 64% | 50% |
マレーシア | 80.6 | 121.5 | 82.6 | 79.3 | 84.2 | 77% | 80% | 70% | 73% | 71% |
ニュージーランド | 26.1 | 29.3 | 20.3 | 21.8 | 19.7 | 40% | 35% | 34% | 32% | 31% |
パキスタン | 14.2 | 23.1 | 20.4 | 22.7 | 18.9 | 92% | 92% | 88% | 86% | 83% |
フィリピン | 45.0 | 70.7 | 49.2 | 31.1 | 33.2 | 91% | 92% | 83% | 77% | 70% |
シンガポール | 40.4 | 56.6 | 56.6 | 58.3 | 61.8 | 53% | 59% | 56% | 52% | 51% |
台湾 | 165.5 | 117.0 | 136.9 | 141.3 | 122.9 | 70% | 66% | 63% | 59% | 54% |
タイ | 99.1 | 137.1 | 94.4 | 48.6 | 82.2 | 82% | 80% | 84% | 82% | 81% |
ベトナム | 35.1 | 15.2 | 10.1 | 10.3 | 13.1 | 99% | 99% | 98% | 97% | 98% |
その他の地域 | 90.1 | 49.1 | 32.0 | 16.7 | 20.3 | 95% | 86% | 83% | 74% | 71% |
アジア・ 太平洋地域 合計 |
3,991.4 | 3,739.3 | 3,916.2 | 2,954.8 | 2,791.5 | 64% | 55% | 52% | 49% | 47% |
全世界合計 | 13,332.6 | 11,306.3 | 11,440.1 | 10,976.5 | 12,163.2 | 46% | 43% | 40% | 38% | 36% |
【2】世界地域別に見た著作権侵害による損害額1999 年 1 月〜 12 月(IPR推計)
損害額 (100万米ドル) | 世界の損害額に占める割合 | |
西欧 | 3,629.4 | 29.8% |
東欧 | 505.2 | 4.2% |
北米 | 3,631.2 | 29.9% |
ラテンアメリカ | 1,127.6 | 9.3% |
アジア・太平洋 | 2,791.5 | 22.9% |
アフリカ・中近東 | 478.2 | 3.9% |
全世界合計 | 12,163.2 | 100% |
【3】違法コピーによる損害額が多い10カ国リスト
国名 | 損害額(100万米ドル) | 各国違法コピー率(%) | |
1 | アメリカ | 3191.1 | 25 |
2 | 日本 | 975.4 | 31 |
3 | イギリス | 679.5 | 26 |
4 | ドイツ | 652.4 | 27 |
5 | 中国 | 645.5 | 91 |
6 | フランス | 548.4 | 39 |
7 | カナダ | 440.1 | 41 |
8 | イタリア | 421.4 | 44 |
9 | ブラジル | 392.0 | 58 |
10 | オランダ | 264.4 | 44 |
上記の10カ国における損害額合計は82.1億米ドルで、全世界の損失額合計の67.5%に相当する。
【4】違法コピー率算出方法
インストールされたソフトウェア(需要)本数と合法的に出荷されたソフトウェア(供給)本数との差が、違法コピーされたソフトウェアの数に相当すると考えられる。著作権侵害度は、違法コピーされたソフトウェアの数をインストールされたソフトウェア総数で割った割合(%)で算出される。