■2000/04/19
ソフトメーカー3社、組織内不正コピーによる著作権侵害で
株式会社東京リーガルマインドを提訴
-大手司法試験予備校による著作権侵害に、約1億1,400万円の損害賠償を求める-
コンピュータソフトウェアの権利保護を目的とした非営利団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、以下BSA、本部:米国ワシントンD.C.、会長:ロバート・W・ハリマン)の会員企業3社は本日、株式会社東京リーガルマインド(本社:東京都港区、代表取締役:反町勝夫)に対し、コンピュータソフトウェアの組織内での不正コピーについて、著作権侵害を理由として、損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に提起しました。
訴訟を提起したのは、アップルインコーポレーティド(本社:米国カリフォルニア州クパティーノ市)、アドビシステムズインコーポレーテッド(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ)およびマイクロソフトコーポレーション(本社:米国ワシントン州レドモンド市)の3社。被告は、本社を東京に置き、全国各地に校舎を有する司法試験など各種国家試験合格のための受験指導および教育に関するビデオ・カセット・書籍及びマルチメディアの商品開発などを事業内容としており、この分野では大手の会社。原告各社は、被告が社内のコンピュータに、原告各社が著作権を有するソフトウェアを不正コピーした上で業務に使用していたことについて、著作権法に基づき不正コピーの消去およびその損害を賠償することを求めています。
訴状にも明らかにされているとおり、被告企業は社内ソフトウェアの購入、管理を統括する部署において一連の不正コピーを行い、組織的に不正コピーを行ってきました。さらに不正コピーされていたソフトウェアには、不正コピーを防ぐ方法の一つであるネットワーク・プロテクションの機能が含まれているものもありましたが、訴状によると被告企業内の不正コピーされたソフトウェアが含まれる大半のコンピュータにはこの機能を回避する第三者のソフトウェアがインストールされ、組織的に不正コピーが使用されていたものと考えられています。
なお、企業内部での不正コピーは、証拠を得ることが困難な場合もありますが、今回の事例では、原告各社は違法コピー防止を呼びかける BSA のホットラインを通じて被告企業内での行為を知る立場にある者から情報提供を受けました。さらに原告企業はこの情報にもとづき東京地方裁判所に証拠保全の申し立てを行い、その結果1999年5月に同裁判所担当裁判官がおもむき、原告各社の立会いのもと、被告企業が有する校舎の1つにて証拠保全手続きが行われ、被告企業が使用許諾されていない多数のソフトウェアを保有していることが判明しました。
原告各社は通常、著作権侵害の疑いのある企業などの組織に対して話し合いを通じた解決を図っており、今回も和解による解決をめざし努力をしましたが、やむなく訴訟提起に踏み切ったものです。
原告各社は被告企業による不正コピーによって、少なくとも約1億1,400万円の損害を被ったことを主張しています。また今回の事例のような企業内の組織的な著作権侵害の場合には、コンピュータソフトウェアの性質、業界の慣行、不正コピーの態様およびこのような不正行為が社会に与える影響などについても考慮されるべきであることを主張し、ソフトウェアに関する権利保護の適正なあり方についての司法の積極的な判断を求めています。
ソフトウェアの不正コピーは、ソフトウェアメーカーに対して損害を与えるだけでなく、コンピュータ・ウィルスの蔓延など、最終的にはエンドユーザーにも深刻な損害をもたらします。また、流通・販売業者の事業を困難にしているほか、ソフトウェアメーカーの新規開発にも悪影響を及ぼしていることは言うまでもありません。
社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会の久保田裕専務理事は、「訴状を読む限り、本件で訴えられたような企業行為が、新たな良質のソフトウェアの開発を阻害し、ソフトウェア産業の成長を鈍らせ、ひいてはデジタル文化全体の発展をも妨げる大きな要因の1つであると考えます。また組織内で使用されている使用許諾されていないソフトウェアの究明や防止のために割かれるソフトウェアメーカーの労力も決して小さいものではありません。その意味で、不正コピーを行っている企業を放置することはできず、社会的にも責任を問われるべきであると考えます。この訴訟を契機に企業内の不正コピーがもたらす悪影響についての理解をうながすことを期待しています。」と述べています。