■1999/05/26
1998年の全世界のソフトウェアの違法コピー率は38%
被害総額は110億米ドル
-全世界のコンピュータ・ソフトウェアの 1/3 が違法コピー-
コンピュータソフトウェアの権利保護団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、以下 BSA、本部:米国ワシントン DC、会長:ロバート・W・ハリマン)とソフトウェア・アンド・インフォメーション・インダストリー・アソシエーション (Software & Information Industry Association, SIIA) は、米国時間 5 月 25 日、全世界における 1998 年 1 月〜 12 月のコンピュータ・ソフトウェアの違法コピーに関する調査結果を発表しました 。同調査によると、全世界のソフトウェアの違法コピー率は 38% で、全世界でインストールされたソフトウェアアプリケーションのおおよそ 1/3 が違法コピーであることが判明しました。また、総被害額は 110 億ドル (約 1 兆 3,530 億円、123 円 = $1 で算出、以下同様)に達しました。日本国内では、全体の 31% のソフトウェアが違法コピーであり、6 億米ドル (約 738 億円) の損害があったと推定されます。
同調査は、BSA と SIIA の委託により、インターナショナル・プランニング・アンド・リサーチ (International Planning and Research、以下 IPR) が実施したものです。同社は BSA と SIIA メンバー企業の販売データと市場情報が検討し、オペレーティング・システムとクライアント/サーバ・アプリケーションを除く、26 種類のビジネス・ソフトウェアを対象として、世界のソフトウェア市場における違法コピー率と、それに伴う金銭的な損害を算出しました。
IPRの調査によれば、1998 年の全世界の違法コピー率は 38% で、初めて 40% を切りましたが、減少幅は過去最低となりました。1998 年一年間の違法コピーによる損害額は、1997 年の 114 億米ドルから 110 億米ドルに減少しました。同社では以下の 5 点を減少理由としてあげています。
- ソフトウェア企業が世界の全地域において合法的な販売経路を確立することにより、ユーザーがソフトウェアを合法的に入手することが容易になった。
- ソフトウェア企業が米国以外においても製品のカスタマーサポートを強化したため、正規品の購入率が高くなった。96 〜 97 年にソフトウェアの価格が下がり、合法的製品と海賊版との価格差が縮まった。
- BSAとSIIAが合法的製品を購入する必要性や知的財産権の重要性に関する知識の普及に努力したことにより企業での違法コピーが減少した。
- グローバル化しつつある市場において、企業による違法ソフトの使用は法的問題だけにとどまらず、事業方針や信頼性にまで関わってくることを企業側が認識しはじめた。
- 知的財産に対する法的保護および海賊行為を処罰の対象とすることに各国政府が協力した。
地域別にみると、違法コピー率が最も高かったのは、前年に引き続き東欧地域で 76% (前年 77%) でした。アメリカ、カナダを含む北米地域の違法コピー率は 26% と世界で最も低かったものの、損害額は 32 億米ドルで世界最高となりました。アジア太平洋地域の違法コピー率は前年度比 3 ポイント減少の 49%、損害額は、前年度約 1 億ドル減少の 30 億米ドルでした。国別では、昨年同様ベトナム (97%) と中国 (95%) が目立って高く、オマーン、レバノン、ロシアをのぞく CIS (独立国家共同体) (93%)、ロシア、インドネシア (92%)、ブルガリ (90%) でした。違法コピー率の低い国は、米国 (25%)、ドイツ (28%)、イギリス (29%)、デンマーク、日本 (31%)、ニュージーランド、フィンランド (32%) という結果となりました。
今回の調査ではアジア地域のみが違法コピー率が減少し、1997 年の 52% から 49% になり、被害総額は 39 億ドルから 30 億ドルへと減少しました。IPRでは、この減少は主に同地域の経済不況によるものであり、景気回復後は減少が逆転することになるだろうと予想しています。
日本の違法コピー率は、1997 年の 32% から 31% に低下し、アジア地域で違法コピー率が最も低い国となりました。損害額は 8 億米ドルから 6 億米ドルへと改善しましたがアジアにおける違法コピーによる損害額の 20% を日本が占めています。BSA 副会長のパメラ・パスマンは「日本の違法コピーは、アジアで最も低いものになったことは、著作権についての理解が広まり、また多くの企業等でソフトウェア管理が浸透してきたことの現れだと思います。一方で、違法コピー率の変化はわずかなものだったことは、多くの企業においてソフトウェア管理が実施されている一方、教育機関や地方自治体など、著作権の重要性を認識していただかなければならない組織での改善が十分でないことと、企業内でも一部には、確信的に違法コピーを継続しているところが存在していることが原因とみられます。BSA では、ソフトウェアの権利に対する理解を深めて頂く為の啓発活動や違法コピーの調査・撲滅と著作権保護の推進活動を推進していきます。」と述べました。
BSA は、アドビシステムズ、アップル、アタッチメイト、オートデスク、ベントレー・システムズ、コーレル、インプライズ、ロータスデベロップメント、マクロメディア、マイクロソフト、ネットワークアソシエイツ、ノベル、シマンテック、ビジオなど大手ビジネスソフトウェア会社が組織する非営利団体です。BSA は世界 65 カ所以上の国や地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。アジア地域での活動メンバーにはインプライズが含まれます。日本においては、株式会社ジャストシステムが活動に参加しているほか、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会とも調査並びに教育・啓発活動で連携しています。
BSA は、違法コピーホットライン (0120-79-1451 なくそう、違法行為) と電子メール(hotline@bsa.or.jp ) で違法コピーの通報を受付けています。BSA に関する情報はホームページ (http://www.bsa.or.jp) に掲載されています。
アジア・太平洋地域におけるコンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害行為による損害額および違法コピー率(IPR 推計)- 1995 / 1996 / 1997 / 1998 年比較 -
国 名 | 損害額 (100万米ドル) | 違法コピー率 | ||||||
1995年 | 1996年 | 1997年 | 1998年 | 1995年 | 1996年 | 1997年 | 1998年 | |
オーストラリア | 198.1 | 128.3 | 129.4 | 192.2 | 35% | 32% | 32% | 33% |
中華人民共和国 | 443.9 | 703.8 | 1,449.5 | 1,193.4 | 96% | 96% | 96% | 95% |
香港 | 122.9 | 129.1 | 122.2 | 88.6 | 62% | 64% | 67% | 59% |
インド | 155.6 | 255.3 | 184.7 | 197.3 | 78% | 79% | 69% | 65% |
インドネシア | 150.9 | 197.3 | 193.3 | 58.8 | 98% | 97% | 93% | 92% |
日本 | 1,648.5 | 1,190.3 | 752.6 | 596.9 | 55% | 41% | 32% | 31% |
韓国 | 675.3 | 515.5 | 582.3 | 197.5 | 76% | 70% | 67% | 64% |
マレーシア | 80.6 | 121.5 | 82.6 | 79.3 | 77% | 80% | 70% | 73% |
ニュージーランド | 26.1 | 29.3 | 20.3 | 21.8 | 40% | 35% | 34% | 32% |
パキスタン | 14.2 | 23.1 | 20.4 | 22.7 | 92% | 92% | 88% | 86% |
フィリピン | 45.0 | 70.7 | 49.2 | 31.1 | 91% | 92% | 83% | 77% |
シンガポール | 40.4 | 56.6 | 56.6 | 58.3 | 53% | 59% | 56% | 52% |
台湾 | 165.5 | 117.0 | 136.9 | 141.3 | 70% | 66% | 63% | 59% |
タイ | 99.1 | 137.1 | 94.4 | 48.6 | 82% | 80% | 84% | 82% |
ベトナム | 35.1 | 15.2 | 10.1 | 10.3 | 99% | 99% | 98% | 97% |
その他 | 90.1 | 49.1 | 32.0 | 16.7 | 95% | 86% | 83% | 74% |
アジア・ 太平洋 地域合計 |
3,991.4 | 3,739.3 | 3,916.2 | 2,954.8 | 64% | 55% | 52% | 49% |
世界地域別に見た著作権侵害行為における損害額 1998 年 1 月〜 12 月 (IPR 推計)
損害額 (100万米ドル) | 世界の損害額に 占める割合 |
|
西欧 | $2,760.3 | 25% |
東欧 | $640.0 | 6% |
北米 | $3,195.8 | 28% |
ラテンアメリカ | $1,045.5 | 10% |
アジア・太平洋 | $2,954.8 | 27% |
アフリカ・中近東 | $380.0 | 4% |
全世界合計 | $10,976.5 |
違法コピーによる損害額が多い 10 カ国リスト(IPR 推計)
順位 | 国名 | 損害額 (億米ドル) | 違法コピー率 |
1 | アメリカ | 28.8 | 25% |
2 | 中国 | 11.9 | 95% |
3 | 日本 | 6.0 | 31% |
4 | ドイツ | 4.8 | 28% |
5 | イギリス | 4.6 | 29% |
6 | フランス | 4.3 | 43% |
7 | ブラジル | 3.7 | 61% |
8 | イタリア | 3.6 | 45% |
9 | カナダ | 3.2 | 40% |
10 | ロシア | 2.7 | 92% |
※ 上記の 10 カ国における損害額合計は 73.5 億米ドルで、全世界の損失額合計の 67% に相当する。
違法コピー率算出方法
インストールされたソフトウェア (需要) 本数と合法的に出荷されたソフトウェア (供給) 本数との差が、違法コピーされたソフトウェアの数に相当すると考えられる。著作権侵害度は、違法コピーされたソフトウェアの数をインストールされたソフトウェア総数で割った割合 (%) で算出される。