リリース記事

■1998/06/19
1997年のソフトウェアの著作権侵害による被害総額、
世界中で114億米ドルに達する
-全世界のコンピュータ・ソフトウェア 10 本のうち 4 本は違法コピー-

コンピュータソフトウェアの権利保護団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス (Business Software Alliance、以下 BSA、本部: 米国ワシントン DC、会長: ロバート・W・ハリマン) とソフトウェア・パブリッシャーズ・アソシエーション (Software Publishers Association、以下 SPA、同: 会長ケン・ウォッシュ) は、米国時間 6 月 16 日、全世界における 1997 年 1 月〜 12 月のコンピュータ・ソフトウェアの違法コピーに関する調査結果を発表しました。同調査によると、全世界のソフトウェアの違法コピー率は 40% で、10 本に 4 本は違法コピーであることがわかりました。日本国内では、全体の 32% のソフトウェアが違法コピーであり、8 億米ドル (約 1,160 億円、145 円 = $1 で算出、以下同様) の損害があったと推定されます。

同調査は、BSA と SPA の委託により、インターナショナル・プランニング・アンド・リサーチ (International Planning and Research、以下 IPR) が実施したものです。世界 82 か国からの販売データと市場情報が検討され、オペレーティング・システムとクライアント/サーバ・アプリケーションを除く、26 種類のビジネス・ソフトウェアを対象として、世界のソフトウェア市場における違法コピー率と、それに伴う金銭的な損害を算出しました。

IPR の調査によれば、1997 年の全世界の違法コピー率は 40% で、1996 年の 42% から若干低下しているものの、ソフトウェア市場の成長を反映して、1997 年 1 年間の違法コピーによる損害額は、1996 年の 112 億米ドルから 114 億米ドルに増加しました。1997 年に世界中で使用されている 5 億 7,400 万のビジネス・ソフトウェアのうち、2 億 2,800 万本が違法コピーであり、1996 年の 2 億 2,500 万本と比較して 300 万本が新たに違法に使用されたことになります。

地域別にみると、違法コピー率が最も高かったのは、前年に引き続き東欧地域で 77% (前年 80%) でした。北米地域の違法コピー率は 27% と世界で最も低かったものの、損害額は 28 億米ドルと世界最高でした。アジア太平洋地域の違法コピー率は 52% で、損害額は、39 億米ドルでした。国別では、ベトナム(98%) と中国 (96%) が目立って高く、インドネシア、オマーン、ブルガリア (93%) 、ロシアをのぞく CIS (独立国家共同体) (92%) で 90% を超えました。違法コピー率の低い国は、米国 (27%)、イギリス (31%)、オーストラリア、デンマーク、日本 (32%)、ドイツ (33%) という結果となりました。

アジアは前年に引き続き違法コピーによる損失額が世界最大の地域で、1996 年の 37 億米ドルから1997 年には 39 億米ドルに増加しています。なかでも中国 (14 億米ドル)、日本 (7 億 5,200 万米ドル)、および韓国 (5 億 8,200 万米ドル) はこの地域の損害額の 71% を占めます。IPR では、損害額の増加について、使用されるビジネス・ソフトウェアの数が 3% 増加したことと、より高度で高価なアプリケーションが違法コピーの対象となっていることが原因である分析しています。損害額が増加する一方で、アジア地域の違法コピー率は 1996 年の 55% から 52% に低下しました。タイ (80% から 84% に増加) と香港 (64% から 67% に増加) を除き、すべての国で違法使用率が着実に低下しています。

日本の違法コピー率は、1996 年の 41% から 32% に低下し、損害額は 12 億米ドルから 8 億米ドルへといずれも前年から改善しました。日本は、アジアにおける違法コピーによる損害額の 19% を占めます。BSA 副会長のマイケル 阿部は「今回の調査でわかるように、日本における違法コピー率は着実に低下しています。BSAは、日本のコンピュータ・ユーザにソフトウェアの著作権保護の重要性をもっとよく知ってもらうため、企業、教育機関、地方自治体などにおけるコンピュータ・ソフトウェア管理に関する教育・啓発活動を行っています。今後も教育活動を進める一方で、著作権保護の推進活動によって違法コピーの削減に協力していきます」 と述べました。

BSA では、6 月 10 日に調査レポート 『パッケージ・ソフトウェア産業が日本経済発展に果たす役割』を発表しました。パッケージ・ソフトウェア産業のもたらす経済的効果について、違法コピーとの関連性を分析したこのレポートによれば、1996 年時点で 41 パーセントであった日本の違法コピー率が消滅した (0 パーセントになった) と仮定すれば、7 万 2,443 件の追加の雇用機会と、11 億米ドル (約 1,595 億円) の追加の政府歳入をもたらしただろうと予測されます。また、1996 年以降、違法コピー率が 0 パーセントのまま推移したとすれば、2001 年にはパッケージ・ソフトウェア産業によってもたらされる雇用機会の合計は、28 万 4,719 人に達し、歳入は合計 52 億米ドル (約 7,540 億円) に達すると予想されます。

BSA は、1988 年に設立し、アドビ システムズ、アップル コンピュータ、オートデスク、ベントレーシステムズ、ロータス デベロップメント、マイクロソフト、ノベル、シマンテックなど大手ビジネス ソフトウェア会社が組織する非営利団体です。BSA は世界 65 カ国以上でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。日本においては、株式会社ジャストシステムが活動に参加しています。BSA は、組織内違法コピー対策に重点をおいて活動しています。調査並びに教育・啓発活動に関して社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会や社団法人日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会など関連団体と協調して活動しています。違法コピーに関する通報受付けは、「違法コピーホットライン (0120-79-1451)」 ならびに 電子メール (hotline@bsa.or.jp) で受付けています。日本語のウェブサイト: http://www.bsa.or.jp

世界地域別に見た著作権侵害行為における損害額1997 年 1 月〜 12 月 (IPR 推計)

損害額
(1,000米ドル)
世界の損害額に
占める割合
西欧 $2,518,726 22%
東欧 $561,355 5%
北米 $3,074,266 27%
南米 $919,653 8%
アジア・太平洋 $3,916,236 34%
アフリカ・中近東 $391,510 4%
全世界合計 $11,381,746

アジア・太平洋地域における、コンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害行為における損害額および違法コピー率(IPR 推計)

国  名 損害額 (1,000米ドル) 違法コピー率
1995年 1996年 1997年 1995年 1996年 1997年
オーストラリア 198,146 128,267 129,414 35% 32% 32%
中華人民共和国 443,933 703,839 1,449,454 96% 96% 96%
香港 122,938 129,109 122,169 62% 64% 67%
インド 155,645 255,344 184,664 78% 79% 69%
インドネシア 150,921 197,313 193,275 98% 97% 93%
日本 1,648,493 1,190,323 752,598 55% 41% 32%
韓国 675,281 515,547 582,320 76% 70% 67%
マレーシア 80,596 121,488 82,552 77% 80% 70%
ニュージーランド 26,083 29,271 20,284 40% 35% 34%
パキスタン 14,233 23,144 20,395 92% 92% 88%
フィリピン 45,022 70,735 49,151 91% 92% 83%
シンガポール 40,374 56,553 56,599 53% 59% 56%
台湾 165,462 116,980 136,850 70% 66% 63%
タイ 99,146 137,063 94,404 82% 80% 84%
ベトナム 35,076 15,216 10,132 99% 99% 98%
その他 90,053 49,113 31,974 95% 86% 83%
アジア・太平洋地域合計 3,991,399 3,739,304 3,916,236 64% 55% 52%

違法コピーによる損害額が多い 10 カ国リスト(IPR 推計)

国   名 損害額 (米ドル) 違法コピー率
 アメリカ 28億 27%
 中国 14億 96%
 日本 8億 32%
 韓国 6億 67%
 ドイツ 5億 33%
 フランス 4億 44%
 ブラジル 4億 62%
 イタリア 3億 43%
 カナダ 3億 39%
 イギリス 3億 31%

※ 上記の 10 カ国における損害額合計は 78 億米ドルで、全世界の損失額合計の 68% に相当する。

違法コピー率算出方法
インストールされたソフトウェア (需要) 本数と合法的に出荷されたソフトウェア (供給) 本数との差が、違法コピーされたソフトウェアの数に相当すると考えられる。著作権侵害度は、違法コピーされたソフトウェアの数をインストールされたソフトウェア総数で割った割合 (%) で算出される。