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IT Pro Special KDDIフィロソフィーに基づくフェアな企業文化をソフトウェア管理に生かす KDDI株式会社 BSA特別対談
KDDI株式会社 情報システム本部長 執行役員 繁野 高仁氏

 高品質で利便性に富んだ情報通信サービスの提供を通じて,情報を自由かつ安全にやり取りできるユビキタス・ネットワーク社会を目指すKDDI。ソフトウェア著作権保護の教育啓発や政策提言などの活動を展開するビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA)。安全で信頼できるデジタル社会の実現に貢献する両者の思いは共通している。

 BSA顧問弁護士の石原修氏(TMI総合法律事務所)が,KDDIフィロソフィーのフェア精神に基づく企業文化をソフトウェア資産管理に生かすKDDI情報システム本部長 執行役員の繁野高仁氏に同社の管理体制や取り組みを聞いた。

ビジネス ソフトウェア アライアンス(BSA) 顧問弁護士 石原 修氏

石原弁護士(以下,石原):BSAでは,啓発活動を通じた知的財産に関する意識の向上,政策提言を通じた知的財産の保護・活用を促進する環境づくり,ビジネスソフトウェアに関する違法コピー情報の収集・調査・分析を通じた権利保護の支援を三本柱に世界的な活動を続けています。
 違法コピーに関する情報提供窓口を開設し,電話,メール,Webで情報提供を受け付けていますが,近年,情報提供者の数は増えています。経営層が経費節減を理由に違法コピーを支持するケースもあれば,経営層が漫然と放置するケースもあります。昨年10月には,大阪地方裁判所で,ソフトウェアの違法コピーの防止に関する管理体制に不備があり漫然と放置したことが悪意または重過失にあたるとして,代表取締役に個人責任を認める判決がありました。コンプライアンスが経営の根幹になり,知的財産に対する全社的な意識改革が重要視されていますが,KDDIではどのように取り組んでおられるのですか。

業務に必要なソフトは購入するなど違法コピーをしない環境づくり

繁野本部長(以下,繁野):従来からコンプライアンスを徹底するため,テーマを決めて議論したり,専用のホームページに掲示板を設け各自の経験を書き込むなど,啓蒙活動を続けています。この基本になるのがKDDIフィロソフィーです。KDDI発足の立役者である稲盛和夫の思想を反映したもので,公正,公平,正義といった原理原則に基づく判断,基本的な倫理観を企業文化として明文化しています。
 ソフトウェア管理についてもこのKDDIフィロソフィーのフェア精神が生かされ,きちんと正規のものを購入することを徹底しています。

石原:KDDIは第二電電,KDD,日本移動通信が合併して2000年10月に誕生しましたが,企業文化の統一はもちろん,膨大なソフトウェア資産の一元管理にもご苦労されたのでは。

繁野:合併後,1万人規模の企業になり,確かに当初はどこでどんなソフトウェアが使われているのか把握しきれないのが実態でした。また,各社の管理方法が異なっていたため,ライセンス管理が不明なものは思い切って買い直すといった荒療治を実施するなど,ライセンスの正確性を期すようにしました。さらに,購買管理システムを利用して過去の購入情報を把握し,棚卸しなども併せて実施しました。
 こうしたシステム的な資産管理に加え,違法コピーをしない環境づくりが重要です。新規購入にしても,ライセンスの追加にしても,情報システム本部のコーポレートシステム部を通じて申請する仕組みにより,ソフトウェアを一元管理しています。
 また,アドミニストレータ権限を本社で集中管理しており,一般社員は違法コピーはおろか,ソフトウェアのインストールもできない仕組みです。

定期的なインベントリー収集で1万4000台に及ぶPCとソフトを管理

石原:権限者以外はシステムに触れないというわけですが,具体的にはどのようにソフトウェア資産管理を行っているのですか。

繁野:システム管理ツールのMicrosoft Systems Management Serverを用いて定期的にインベントリー収集を実施しており,1万4000台に及ぶPCの大半はこれでソフトウェア資産管理が可能です。長期出張などでPCの電源が入っておらず,情報を入手できない場合,各部署の管理者に依頼して収集します。その際,管理者には一度だけログインできるパスワードを付与するなど,アクセス権の制限を徹底しています。
 こうして収集されたソフトウェア情報は端末管理システムへ自動的に反映される仕組みです。手間のかかるソフトウェアのインストールやバージョンアップなどもコーポレートシステム部に任せられることから,社員にも好評です。

石原:ソフトウェア管理は,違法コピーのみならず,情報漏えい防止の観点からも重要になっています。

繁野:おっしゃる通りです。2005年4月からの個人情報保護法の完全施行を目前に控え,コンプライアンスの徹底化を図るとともに,情報セキュリティーに関して顧客情報管理を強化しているところです。具体的には社内ネットワーク接続時のユーザー認証の強化や外部出力の制御などに取り組んでいます。
 また,ビジネスソフトウェアの著作権に関する活動を行っているBSAと同様に,私たちは音楽などのコンテンツの著作権を重要視しています。携帯電話で手軽に音楽をダウンロードできるのも,著作権管理がきちんとしているからです。著作権管理やソフトウェア管理の重要性を皆が理解し,社会全体で取り組んでいく必要があると思います。

石原:貴重なお話を聞かせていただき,どうもありがとうございました

KDDIのプロフィール

会社名:KDDI株式会社
所在地:東京都千代田区飯田橋 3-10-10 ガーデンエアタワー
設立:1984年
資本金:1418億5100万円
代表者:代表取締役社長 小野寺 正
社員数:約9000人 (出向含まず)
事業内容:電気通信事業
携帯電話事業,ブロードバンド事業,ソリューション事業を柱に,コンテンツ,e-コマース,メディア事業等を加え,より付加価値の高い情報通信差へビスを提供する「ユビキタス・ソリューション・カンパニー」を目指している。
URL:http://www.kddi.com/



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ビジネス ソフトウェア アライアンスPR事務局
〒141-0021 東京都品川区上大崎3-1-1
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違法コピーホットライン 0120-187940(違反無くして)
URL:http://www.bsa.or.jp/itpro/
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