リリース記事

■2003/10/23
大阪地裁、ソフトウェアの組織内不正コピーにおいて
経営者責任を認める初の判決
-パソコンから消去しても使用状況から不正コピーを推認-

大阪地方裁判所(小松一雄 裁判長)は、本日(10月23日)、PCスクールを経営する株式会社ヘルプデスクに対し、原告3社の著作権侵害を認定するとともに、被告代表取締役自身にコンピュータソフトウェアのライセンス管理義務違反に基づく損害賠償義務を認定する判決を下しました。

この判決は、コンピュータソフトウェアの権利保護を目的とした非営利団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、本部:米国ワシントンD.C.、会長:ロバート・W・ハリマン、以下 BSA)の会員企業2社を含む大手ソフトウェアメーカー3社が、2002年9月3日に株式会社ヘルプデスクに対し、コンピュータソフトウェアの組織内での不正コピーによる著作権侵害を理由に、損害賠償及び経営者の管理責任を求めていた民事訴訟において、「損害賠償の算定には卸売価格又は市場における実勢販売価格が適用されるべき」「講師が無断で行なったものであり代表者に責任は無い」という被告企業の主張を全面的に否定し、

  • 原告の主張する正規品小売価格(標準小売価格)を損害賠償の算定に適用し
  • 不正コピーの事実認定において、PCの使用の必要性や使用状況から推察して不正コピーがインストールされたと推認されるPC全部に対し不正コピーの存在を認め
  • 代表取締役に「職務上、自己又はその従業員をして、プログラムの違法複製を行なわないように注意すべき義務」を認めたうえで、代表取締役が従業員の違法複製を漫然と放置したことや、違法複製の防止に関する管理体制が不備であったことなどを理由に重過失を認定し、PCスクール(法人)に加えて代表取締役の個人責任を認めたものです。

この結果、原告3者に対して総額38,783,200円の支払い(内弁護士費用は約10%に当たる3,550,000円)が被告(株式会社ヘルプデスク及び代表取締役に連帯して)に命じられました。

組識内不正コピーによる著作権侵害に関する判決としては、2001年5月に東京地裁が下した司法試験予備校判決に続き2件目です。原告側の主張をほぼ全面的に認め、著作権侵害の事実を広く認定するとともに、経営者の個人責任をも認定したこの判断は、今後日本が知的財産権保護を強化していくうえで画期的な判決といえます。

今回、株式会社ヘルプデスクを提訴したのは、アドビシステムズインコーポレーテッド(本社:米国カリフォルニア州サンノゼ)、クォークインク(本社:米国コロラド州デンバー)およびマイクロソフトコーポレーション(本社:米国ワシントン州レドモンド)という、日本のIT産業発展のため国内現地法人が10年以上にわたり活動しているソフトウェアメーカー3社です。原告各社は、被告がソフトウェアを不正コピーした上でPCスクール業務に使用していたことについて、著作権法に基づく不正コピーの消去およびその損害賠償、及び商法に基づくスクール経営者の個人責任を追及していました。

原告3社は、この判決内容について、

  1. 損害賠償の算定に卸売価格や実勢価格ではなく、メーカーの主張する正規品小売価格(標準小売価格)が採用されたこと、及び
  2. PCから削除されていてもPC内にその痕跡が残っていた場合や、また
  3. PCに例え不正コピーの痕跡がなくとも、使用状況等から、不正コピーがインストールされたと推察されるPC全部に対し不正コピーの存在を認めたこと、さらに
  4. 従業員が無断に不正コピーを行ったとする法人経営者の弁解に対し、ソフトウェアのライセンス管理義務違反に基づく個人責任が認められたこと、

を歓迎し、今後コンピュータソフトウェアの知的財産権保護を進めてゆく上で画期的な内容であり、また企業経営者が違法コピー防止に関するコンプライアンス体制を構築する上で重要な意味を有するものと受け止めています。

原告各社に加えてこれらが加盟している業界団体であるBSAは、本判決に対して、企業内不正コピーと言う証拠収集が極めて困難な事案において画期的な事実認定をするとともに、PCスクールに加えて法人代表者の個人責任を認めたことは、日本の企業内不正コピーの抑止に大きな効果を期待できる判決であると評価しています。また、日本の知財立国IT化の促進にも大きく貢献するものと期待を寄せています。しかしながら、企業内不正コピーにおいては不正コピーの情報をすべて被告側が有しており、証拠収集・事実認定が容易でないという事実には変わりがありません。BSAは、今後日本が真の知財立国として更なる発展を遂げるために、コンピュータソフトウェアの不正コピー数の推定方法を含む損害賠償強化に関する方策の法制化が極めて重要であると考えています。

ソフトウェアの不正コピーは、ソフトウェアメーカーに対して損害を与えるだけでなく、コンピュータ・ウィルスの蔓延など、最終的にはエンドユーザにも深刻な損害をもたらします。また、ソフトウェア製品の流通・販売業者の事業を困難にしているほか、ソフトウェア開発者の開発意欲、人材育成の機会を損なうものです。ソフトウェアは情報化社会の基盤をなすものであり、その不正コピーは、日本の知財立国としての発展を妨げることにもなります。BSAは、今後ともソフトウェア著作権に関する啓発、企業・組織におけるコンプライアンスの徹底、不正コピーの撲滅を目指して活動を進めていきます。法人経営者の方で、現在ソフトウェアのライセンス管理についてお悩み、ご質問がある方は、BSAホットライン(電子メール:hotline@bsa.or.jp)までご連絡をお待ちしております。なお、BSAでは、法人経営者のために、有効なライセンス管理を支援するプログラムを今後考えていきます。

(参考) BSA は、アドビシステムズアップル、アビッドテクノロジー、インターネットセキュリティサービス、インテュイット、オートデスク、サイベース、CNCソフトウェア/マスターキャムシマンテック、ソリッドワークス、ネットワークアソシエイツノベル、 ピープルソフト、ベントレー・システムズボーランドマクロメディアマイクロソフト(メンバー構成は、2003年6月末現在)など大手ビジネスソフトウェア会社が組織する非営利団体です。世界65カ所以上の国や地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。日本のローカルメンバーとしては、株式会社ジャストシステム及び株式会社モリサワが権利執行活動に協力しています。社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)とも教育・啓発活動などで連携しています。BSAは、違法コピーホットライン(0120-79-1451 <なくそう、違法行為>)と電子メール(hotline@bsa.or.jp)で違法コピーの通報を受付けています。BSAに関する情報はホームページ(http://www.bsa.or.jp)に掲載されています。

●著作権保護団体の積極的な活動とソフトウェアユーザの意識の向上により、日本の違法コピー率は徐々に低下しており、2002年の日本における違法コピー率は35% になっています。また、大手の市場調査会社IDCの調査結果 によれば、日本の不正コピー率が2006年までに10%軽減した場合には、日本国内で280億米ドル相当の経済効果と41,000人分の雇用創出、及び38億米ドル相当の税収増加がもたらされると発表しています。BSAでは、今後とも違法コピーの撲滅と著作権保護の推進に向け、引き続き教育・啓発活動などを積極的に展開していきます

* 記載の社名および製品名は、各会社の商標または登録商標です。


本件に関するお問い合わせ先 


大阪:
原告訴訟代理人 太平洋総合法律事務所
弁護士 村本 武志
TEL:06-6365-9183
東京:
原告訴訟復代理人 BSA日本担当顧問
TMI総合法律事務所
弁護士 石原 修
TEL: 03-6438-5511


*1 BSAとSIIA(Software & Information Industry Association)の委託によってIPR(International Planning and Research)が調査した2002年1-12月における違法コピー率。

*2 BSAがIDCに委託して実施したこの調査は、世界のIT市場の98%を占める、世界57カ国で情報テクノロジー(IT)業界が及ぼす影響と知的所有権保護法を施行・強化する国々の経済受益を評価したもの。