リリース記事

■2001/05/25
2000年の全世界のソフトウェアの違法コピー率は37%
被害総額は118億米ドル
-アジア太平洋地域の被害額が過去最高の41億ドルに-BSA、日本における組織内違法コピー撲滅活動を一層強化-

コンピュータソフトウェアの権利保護団体、ビジネス ソフトウェア アライアンス(Business Software Alliance、以下BSA、本部:米国ワシントンDC、会長:ロバート・W・ハリマン)が発表した全世界における2000年1月〜12月のコンピュータソフトウェアの違法コピーに関する調査によると、2000年の全世界の違法コピー率は、昨年より1ポイント上昇して37%に、損害額は1999年の122億米ドルから4億米ドル減少の118億米ドルになりました。日本の違法コピー率は昨年から6ポイント上昇の37%で、損害額は前年比6.9億米ドル増加して16.7億米ドルになりました。日本における損害額は、1995年の調査開始以来最高額です。

同調査は、BSAの委託により、インターナショナル・プランニング・アンド・リサーチ(International Planning an Research、以下IPR)が毎年実施しているもので、今年で6回目の調査となります。26種類のビジネス・アプリケーションを調査対象に、世界6大地域における85ヶ国のソフトウェア市場の売上データと市場情報にもとづき、違法コピー率と、違法コピーによる経済的損害を算出しています。

BSAのロバート・ハリマン会長は、今回の調査結果に関して「いくつかの地域と国においては違法コピー率が低下しましたが、依然として違法コピー問題によって世界中で数十万人分の就業機会と数十億ドル分の賃金や税収が奪われています。BSAは、世界規模で展開するソフトウェアの違法コピー撲滅活動の一環として、今後も、教育活動や権利執行への支援活動を続けるほか、違法コピー問題の解決に向けてBSAを支援している世界各地の政府とも協力して活動を行なっていきます。」と述べました。

世界における違法コピー率および損害額
世界における2000年の違法コピー率は、1995年に調査を開始して以来、初めて前年比で減少せずに、逆に1999年から1ポイント上昇して37%でした。違法コピーによる損害額は1999年の122億ドルから3.5%低下して118億ドルとなりました。損害額の大半(87%)は、世界のソフトウェア使用の大半をしめる北米(29億米ドル)、西欧(31億米ドル)、アジア(41億米ドル)での違法コピーによるものです。

地域別にみると、違法コピー率が最も高かったのは、前年に引き続き東欧地域で63%(前年70%)、最も低かったのはアメリカ、カナダを含む北米地域で25%でした。アジア太平洋地域の違法コピー率は、前年比4ポイント上昇し、51%となりました。損害額は、前年から13億米ドル増加の41億米ドルで、調査した6大地域内最高となりました。

国別では、ベトナム(97%)と中国(94%)が目立って高く、インドネシア、ウクライナその他CIS(89%)、ロシア(88%)、レバノン、パキスタン(83%)、ボリビア、カタール(81%)と続いています。違法コピー率の低い国は、米国(24%)、イギリス、デンマーク(26%)、ドイツ(28%)、フィンランド(29%)、オーストラリア、ベルギー/ルクセンブルグ(31%)という結果になっています。(1)

日本の違法コピー率および損害額
2000年の日本の違法コピー率は37%で、1999年から6ポイント上昇となりました。日本はアジア地域で、オーストラリア、ニュージーランドに次ぐ違法コピー率が低い国ではありますが、この調査を開始して以来、初めて前年に比べて違法コピー率が上昇しました。さらに損害額の推計は9.8億米ドルから16.7億米ドルに大幅な増加となりました。2000年は日本国内のPC出荷台数が対前年比 30.4%(2) と大きく拡大し、特に家庭市場において対前年比47.8%(3) 増だったことから、新たなPCユーザーが急激に増加したものの、ソフトウェアの著作権や違法コピーに対する理解促進が新たなPCユーザーに行き渡らなかったこと、依然として組織内違法コピーが後を絶たないことなどが今回の日本における違法コピー率および損害額の背景になっていると考えられます。さらに、高速ネットワークの普及により、インターネットを介した新たな違法コピーの形態の増加が今後、懸念されます。

BSA日本担当事務局長の水越 尚子氏は、「日本の1998年から1999年の違法コピーによる損害額は2倍近くまで増加し、さらに2000年は前年比で71%増加しています。違法コピー率は6%ポイントも急上昇し、日本における違法コピー問題が一層深刻化していることがわかります。BSAでは、ソフトウェア著作権への理解促進のための教育・啓発活動のほか、違法コピーを行う企業や組織に対してソフトウェアメーカーの権利執行の支援活動も行っています。BSAの会員企業であるアップル、アドビシステムズ、マイクロソフトの3社が、2000年4月に大手司法試験予備校である(株)東京リーガルマインドに対し、コンピュータソフトウェアの組織内での不正コピーによる著作権侵害を理由に損害賠償を求めていた民事訴訟の判決が、2001年5月16日に東京地方裁判所でありました。東京地裁は、被告企業がソフトウェアの組織内違法コピーにより、原告3社の著作権を侵害していたことを認める判決を下し、被告企業に対し8,472万400円の損害賠償の支払いを命じました。この判決は、今後の日本において著作権保護を強化する上で大きな進歩といえます。大規模な企業や組織においてソフトウェア管理が強化されている一方、一部の企業では、依然として確信的、継続的に違法コピーをしていることが日本の組織内違法コピーにおける深刻な問題となっています。今後は、著作権保護に対する認知、理解を深めるための教育、啓発活動を展開しながら、日本の組織内違法コピーの撲滅のために民事的な解決に加え、刑事事件における権利者へのサポート、及びインターネット上の違法コピー問題解決へと活動を強化していきます」と述べました。

(1)この調査の詳しい情報は、BSA本部のウェッブサイト(http://www.bsa.org 英語のみ)に掲載しています。
(2)IDCジャパン2001年2月発表の調査 (http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20010222Apr.html)
(3)IDCジャパン2001年2月発表の調査 (http://www.idcjapan.co.jp/Press/Current/20010222Apr.html)

BSAについて
BSAは、アドビシステムズアップルオートデスクベントレー・システムズ、ボーランド、マクロメディアマイクロソフトネットワークアソシエイツノベルシマンテック、UGSなど大手ビジネスソフトウェア会社が組織する非営利団体です。世界65カ所以上の国や地域でソフトウェアの権利保護活動を展開し、ソフトウェア産業の発展に貢献しています。日本においては、 株式会社ジャストシステムが活動に参加しているほか、 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会 とも調査並びに教育・啓発活動で連携しています。 BSAは、違法コピーホットライン(0120-79-1451 <なくそう、違法行為>)と電子メール(hotline@bsa.or.jp)で違法コピーの通報を受付けています。BSAに関する情報はホームページ(http://www.bsa.or.jp)に掲載されています。

【1】アジア・太平洋地域における、コンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害行為による損害額および違法コピー率(IPR推計)〜 1995−2000年 6年間比較 〜

アジア・太平洋地域における、コンピュータ・ソフトウェアの著作権侵害行為による損害額および違法コピー率 比較表はこちら。

【2】世界地域別に見た著作権侵害による損害額 2000年1月〜12月(IPR推計)

  損害額 (100万米ドル) 世界の損害額に占める割合
西欧 $3,079.3 26%
東欧 $404.5 3%
北米 $2,937.4 25%
ラテンアメリカ $869.8 7%
アジア・太平洋 $4083.1 36%
アフリカ・中近東 $376.3 3%
全世界合計 $11,750.4 100%

【3】違法コピーによる損害額が多い10カ国リスト

  国名 損害額 (100万米ドル) 各国違法コピー率 (%)
1 アメリカ 2,632.4 24
2 日本 1,666.3 37
3 中国 1,124.4 94
4 ドイツ 635.3 28
5 イギリス 530.8 26
6 フランス 480.6 40
7 イタリア 421.9 46
8 ブラジル 325.6 58
9 カナダ 305.0 38
10 韓国 302.9 56

上記の10カ国における損害額合計は84.3億米ドルで、全世界の損失額合計の71.1%に相当する。

【4】違法コピー率算出方法
インストールされたソフトウェア(需要)本数と合法的に出荷されたソフトウェア(供給)本数との差が、違法コピーされたソフトウェアの数に相当すると考えられる。著作権侵害度は、違法コピーされたソフトウェアの数をインストールされたソフトウェア総数で割った割合(%)で算出される。

【5】地域ごと概要

アジア太平洋地域:同地域は2000年度において違法コピー率が増加した唯一の地域で、1999年の47%から51%に増加しています。またアジア太平洋での損害額は41億ドルと全損害額の35%を占め、金額的に最大の被害が発生する地域となっています。日本の違法コピー率は37%に拡大し、韓国は56%、中国は94%にそれぞれ拡大しています。最も違法コピー率が高かった国はベトナム(97%)、中国(94%)、およびインドネシア(89%)でした。最も被害額の大きかった国は日本(16億ドル)、中国(11億ドル)、および韓国(3億200万ドル)でした。

東欧:2000年度において東欧の違法コピー率は63%と引き続き最も高く、約4億400万ドルの損害が生じました。ロシアとウクライナ、およびその他のCIS諸国は、それぞれ88%と89%と同地域において最も高い違法コピー率を持続しました。この地域で3番目に大きいポーランドでは6%低下し、2000年度の違法コピー率は54%となりました。

西欧:西欧は34%と引き続き世界で2番目に違法コピー率の低い地域となりましたが、損害額は31億ドルに達し、世界で2番目の被害額を記録しました。この金額は世界全体の被害額の26%にあたります。西欧は違法コピー率について1999年からの変化が最も小さい地域でした。被害額の高かった国は引き続きドイツ(6億3,500万ドル)、英国(5億3,000万ドル)、およびフランス(4億8,000万ドル)でした。最も違法コピー率の高かった国はギリシャ(66%)、スペイン(51%)、およびイタリア(46%)でした。ギリシャとスペインは西欧において2年連続で最も高い違法コピー率を記録しました。

中南米:中南米の違法コピー率は1999年から2000年にかけて低下しましたが、57%の中東を越える58%と、2番目に違法コピー率の高い地域となりました。中南米での被害額は8億7,000万ドルに上っています。最も違法コピー率が高かった国はボリビア(81%)、エルサルバドル(79%)、およびニカラグア(78%)でした。チリは49%と、昨年に引き続き中南米で最も違法コピー率の低い国となりました。地域最大の経済であるブラジルとメキシコではそれぞれ58%と56%と、1999年からの違法コピー率の変化は見られませんでした。第3位の経済規模を持つアルゼンチンもやはり58%でした。

中東およびアフリカ:2000年において中東とアフリカは55%と、3番目に高い違法コピー率を示しました。違法コピー率の最も高かった国はレバノン(83%)、カタール(81%)、およびバーレーンとクウェート(80%)でした。同地域での被害額は3億7,600万ドルでした。中東最大の経済を持つ3か国、トルコ、イスラエル、およびサウジアラビアの違法コピー率は1999年から低下しています。トルコでは違法コピー率の低下が最も著しく、1999年の74%から 2000 年の63%に減少しました。イスラエルの違法コピー率は最も低い41%となり、サウジアラビアでは前年の64%から59%に低下しました。アフリカは違法コピー率の低下が世界で最も著しい地域であり、前年の56%から2000年は52%に低下しました。違法コピー率の低下と経済の活況は、長期的な率の低下と、ソフトウェアに関する慣行のより大きな変化を示すものです。

北米:北米の違法コピー率は25%と、引き続き世界で最も低い違法コピー率を記録しました。過去6年において、同地域の違法コピー率は32%から25%にまで低下しています。2000年の調査では、北米での被害額は3番目に大きい29億ドルでした。アジア太平洋と西欧はそれぞれ41億ドルと31億ドルと、北米地域を上回りました。2000年において米国での違法コピー率は24%にまで低下し、カナダでは3%低下して38%になりました。北米地域での過去6年間の被害額合計は220億ドル以上に達しています。2000年度の被害額は米国ではほぼ26億ドル、カナダでは3億500万ドルでした。